2017年12月9日土曜日

"The Disaster Artist"『ディザスター・アーティスト』

『ザ・ルーム』という映画をご存じでしょうか。"The best worst movie"、"ダメ映画の『市民ケーン』"と呼ばれ、あまりのひどさにカルト化し、2003年にロスの映画館1館のみで2週間上映されて以来、14年にわたって今も世界中で上映されています。

映画に助演したグレッグ・セステロが『ザ・ルーム』の舞台裏を描いたノンフィクション"The Disaster Artist"を読んで、製作・脚本・監督・主演したトミー・ワイゾーにいたく共鳴したジェームズ・フランコが、本に基づき映画化したのがこの作品。サンフランシスコの演劇クラスで出会ったトミーとグレッグのなれそめにはじまり、スターを夢見たふたりがロスに出、苦い挫折の末に自分たちで映画を作ろうと一念発起し、制作からプレミアまでの道のりを追います。

『ザ・ルーム』と"The Disaster Artist"映画化までの経緯は、こちらを参照されたし。
"The Room"もぎたて感想

ジェームズ・フランコがトミー役、弟のデイブがグレッグ・セステロ役。その他、豪華なカメオ出演が多数。映画化の交渉をした際、トミーは自分役にジョニー・デップを所望したそうです😅。トミー本人もエンド・クレジットが終わった後、怪しいパーティ客の役で顔出ししています。トミー役を演じているフランコとのシーンを、映画化の条件のひとつとしてトミー自ら要求したといういかにもな理由でした。

一番の見どころは、とにかくクセのあるトミーを、独特なアクセントから笑い方から運動オンチぶりから、なりきって演じたフランコの演技にあります。フランコたち勝ち組のハリウッド人が、こうも『ザ・ルーム』とトミーに魅了される理由とは? 知りたい人は、『ディザスター・アーティスト』に、そのヒントがあります(映画冒頭でハリウッドセレブらが『ザ・ルーム』への傾倒ぶりを告白するシーンすらあります)。意外だったのは、今でもトミーとグレッグは毎日やりとりするほど親密な仲だということ。げに男心は不可解なり。

この映画を見たDel Mar Theaterで、明後日は『ザ・ルーム』深夜上映を観てきます。スプーンを持って行くべきだろうか。

12/10/17
 行ってきました、真夜中の『ザ・ルーム』。
若者たちで大盛り上がりの上映会でした。
海が映れば「ウォーター!」(『奇跡の人』か)、フットボールの投げっこでは「スポーツ!」、ドアを閉めれば"Thank you closing the door!"と叫び、階段を上る場面では足を踏みならし、スプーンの写真立てが映るたびにスプーンが飛び交います(上映前にスプーンを配っている人や、上映中に投げ飛ばしたスプーンを探して回収する人あり。わたしにまでスプーンをくれました)。もう何回も見て、いつ何が映るか、みなさん熟知していらっしゃいます。

集団の若者達って、元気ありすぎて、おばさんはちょっと怖かったですよ😅



2017年12月6日水曜日

“Three Billboards Outside Ebbing, Missouri”『スリー・ビルボード』

オスカーの呼び声高い一本。シカゴ・サンタイムズのリチャード・ローパーは今年のベストに挙げています。

ミズーリ州の小さな田舎町エビング。町外れに立つ3つのビルボード(広告看板)に、真っ赤な地に黒い文字で、7ヶ月前に起きたレイプ殺人事件の犯人を捕まえられずにいる地元警察をなじるメッセージが掲げられた。広告主は被害者の母親、ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)だ。名指しで非難されたウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)を慕う部下達や町の住人達と、ミルドレッドの間に緊張が生まれ、確執は日を追うごとに深まっていく。

2017年12月4日月曜日

"Lady Bird"

2002年、レディ・バード(シアーシャ・ローナン)はカリフォルニア州サクラメントのカソリック系女子校に通う高校3年生だった。本名はクリスティンだが平凡な名前を嫌い、自分でレディバードと名乗っている。刺激のないサクラメントの町も嫌いで、大学は「文筆家達が森に住む」文化の薫り高い東海岸の学校に行きたいと切に願っている。

母親と車中で『怒りの葡萄』の朗読テープを聴きながら涙ぐんでいたと思えば、母親の歯に衣着せない物言いにいらついて衝動的にドアを開けて車から落ちる冒頭場面から、もうこの母子に親近感を覚えてしまいます。レディ・バードはこの愚行のせいで映画の間中、腕にピンク色のギブスをはめてますが。

執筆、監督したのは『フランシス・ハ』などの女優グレタ・ガーウィグ。同作をノア・バームバックと共同脚本するなど、脚本や製作をいくつか手がけ、また何人もの優れた映画監督の現場で学び、「映画学校で正式な監督術は学んでいないけれど(本人の弁)」、満を持しての初監督です。

青春映画、成長物語にもかかわらず、両親や周囲の人間達にも焦点を当て、暖かい作風ながらバランスのとれた映画作りが絶賛され、「誰もがこの映画を好きなる」とツイートしたRotten Tomatosにおける評価は、12/3/17現在185件のレビューで100%の快挙をあげています。

監督の青春時代を緩く下敷きにしていて、2002年当時に流行った曲の使用許可を得るために、じきじきにアーティストたちに手紙を書いたそうで、トーク番組で何通か読み上げてましたが、ジャスティン・ティンバーレイクへの手紙なんか、ほとんどティーンエイジャーの書いたファンレターみたいで面白かったです。

「LoveとAttentionは同じことではないの」とか「これが『最高のわたし』だったらどうする?」とか、名セリフや、印象深い場面がいくつかあります。客席は年配のカップルでいっぱいで、笑い声をあげながらエンジョイしている様子でした。わたしは高校演劇の指導をしている優しいオーソン・ウェルズみたいな顔の神父さんが、大好きでした。生徒達と「一番最初に泣いた者が勝ち」競争をしかけて、自分が一番最初に泣いちゃうの。あと、彼の後釜で、フットボールのコーチをしていた神父さんが、舞台のブロッキングをフットボールのフォーメーションみたいに指示するのも面白かったです(^_^)。レディ・バードは嫌いと公言していたけれど、監督はサクラメントの町を美しく撮っていました。

昨夜(12月2日)、SNLのゲストがシオーシャちゃんで、自分の名前の発音(Saoirse)をネタにしてました。


http://ew.com/tv/2017/12/03/saoirse-ronan-pronunciation-snl-monologue/?utm_campaign=entertainmentweekly&utm_source=twitter.com&utm_medium=social&xid=entertainment-weekly_socialflow_twitter


とあるスケッチではグレタ・ガーウィグが友情出演も(^_^)。

[自分用メモ]Nickelは映画前の前口上をやるようになったらしい。この回はClosed captionを貸してくれた館主。

2017年11月3日金曜日

“The Florida Project”

母親と2人で紫色のモーテル「マジック・キャッスル」に暮らす6歳の少女、ムーニーが過ごすひと夏を描いたインディ映画です。

ファーストシーンで、ムーニーと友達の男の子スクーティが階段下の地べたに足を投げ出して座り、退屈そうに左右の靴先を合わせてコツコツ鳴らしています。仲間がもうひとり来ると、たーっとかけだし、お向かいのモーテル「フューチャーランド」に行き、2階の手すりに腰掛けて駐車場の車につばを飛ばしっこして遊びます。下の部屋から出てきたおばさんが子どもたちをしかっても言うことを聞かないので、モーテルの管理人ボビー(ウィレム・デフォー)を通し、子どもの母親へ苦情を訴えます。細っこい全身に入れ墨を入れ、下唇にピアスをして毛先を緑色に染めた年若い母親のヘイリーは悪びれず、「わたし母親失格だって、ムーニー」とにこにこ。結局ムーニーたちは車のふき掃除をしますが、それすら楽しいお遊びにしてしまい、文句を言った女性の孫ジャンシーも一緒にふきはじめる始末。

2017年10月28日土曜日

“Victoria and Abdul”

『Queen Victoria 至上の恋』でヴィクトリア女王を演じたジュディ・デンチが、20年ぶりに同役を演じ(最近そんなんばっか)、年代的にも『至上の恋』よりも後の、インドから来た使用人との思いがけない友情を扱っています。監督はスティーブン・フリアーズ。

晩年のヴィクトリア女王が主人公の史劇だし、イギリス英語だし、肩がこるだろうと思ったらユーモラスで楽しく観賞できました。後半はちょっとシリアスになるけれど、前半のupliftingな余韻で乗り切れます。

2017年10月26日木曜日

”The Foreigner”


ロンドンで中華レストランのオーナーをしているクアン(ジャッキー・チェン)のまな娘が、テロに巻き込まれて殺される。犯人はIRAの一分派らしいが、構成員の情報も、潜伏場所の手がかりもつかめない。唯一の家族を失い生きる気力をなくしたクアンは実行犯を捕まえて欲しいと警察に通いつめるが、体よく追い払われる。元IRAで現在は英政府の仕事をしているヘネシー(年取って007仲間のショーン・コネリー化してきたピアーズ・ブロズナン)が事件の責任者になったニュースを見たクアンは彼のオフィスに電話し、らちがあかないとみると店を女性マネジャーに任せて単身アイルランドに渡る。

"Geostorm"『ジオストーム』

ディザスター(災害もの)ムービーです。

世界各地で一部の町が消滅するほどまでに異常気象が悪化した2019年、ひとりの天才科学者が地球上空をネットで覆い衛星で気温をコントロールするシステムを開発した。だが、身を挺して堤防の決壊を防いだオランダ少年の逸話から〝ダッチボーイ〟と名づけられたそのシステムの開発者ジェイク(ジェラルド・バトラー)はアメリカ政府の怒りを買って任を解かれ、弟のマックスが後釜に座る。3年後、アフガニスタンの小村が凍りつき、村民が全滅する異常事態が起きる。原因解明のため、再び〝ダッチボーイ〟に送り込まれたジェイクは、まもなく何者かがひそかに〝ダッチボーイ〟を操り、狙い定めた地域に次々と異常気象をもたらしていることをつきとめる。局地的な異常気象がやがて地球規模の不可逆なジオストームを引き起こす前に、ジェイクは犯人を探し出してシステムを元に戻すことができるだろうか!?

2017年10月20日金曜日

"Battle of the Sexes”

1973年、女子テニス界でトップクラスのテニス選手ビリー・ジーン・キングと、往年の名選手ボビー・リッグス(当時55歳)が対戦し、”The Battle of the Sexes”と呼ばれた男vs女のエキシビションを映画化した作品。監督は『リトル・ミス・サンシャイン』のジョナサ・・デイトン&ヴァレリー・ファリスで、キング夫人をエマ・ストーン、リッグスを『リトル・ミス・サンシャイン』でも起用したスティーヴ・カレルが演じています。

なぜそんな試合が行われたのか。映画では試合にいたるまでの過程をキングとリッグスほぼ均等に時間を割き、丁寧に描いています。映画から得た印象では、1、リッグスの性格(ギャンブル好きで過剰な自己演出好き)。2、男女同権運動が高まっていた当時の機運の、ふたつが主な要因だったようです。男性選手よりも報酬が格段に少ないことに異を唱え、女子テニス協会を設立したキング夫人は、リッグスにとって格好の標的でした。

2017年10月17日火曜日

"Loving Vincent" 『ゴッホ ~最期の手紙~』

ゴッホの油絵そのままの絵柄で、ゴッホの死の謎に迫るアニメーション作品。

「油絵が動く」ということでハンガリーの油絵アニメーション『英雄時代』('82)を連想しつつ観に行くと、アニメーションと言っても先に俳優を使い実写で撮った映像を下絵に使う、ロトスコープ方式でした。もちろんそれにより、手間のかかる手法のせいで止め絵や単調な構図ばかりの『英雄時代』に比べ、自在なカメラワークや全編が動きどおしという利点を手にしましたが、「人が作った動き」を楽しむという点での満足感は得にくいです。

そのせいか、スクリーンですごいアートが展開していても、なかなか響いてきません。それからやたらセリフが多いです。「動いている」よりも「しゃべっている」印象の方が強く、これをアニメーションだと思って観に来ると痛い目にあいます(ずばり"talking heads"とまで書いているレビューもあり)。とはいえ監督はれっきとしたアニメ畑の方々で、ひとりはあの鮮烈なコマ撮り作品『ピーターと狼』のプロデューサー、ヒュー・ウェルチマン。もうひとりの監督で画家が本業らしいドロタ・コビエラは、『リトル・ポストマン』という世界初の「立体絵画アニメーション」でLA3D映画祭の短編賞を受賞しています。ドロタさんはなかなかの美女で、彼女に惚れて結婚しちゃったウェルチマンが、彼女が暖めていた短編企画を長編作品にしたのがこの映画。「私はなによりも素晴らしいストーリーを語ることに情熱を注いでいる」と強調するウェルチマンを代弁するように、とにかく登場人物たちは多弁でした。ゴッホが描いた人々に血肉を与える、という試みに共感できればスリリングな映像体験ができるのかもしれません。(監督の弁



エンドクレジットの使用曲"Starry, Starry Night"が素晴らしく、歌声は女性だったのですが、作曲がドン・マクリーンとあったので、帰ってから調べたら、この耳なじみのある曲は「アメリカン・パイ」で有名なマクリーンが作った曲だったのですね。しかも、ゴッホの「星月夜」を歌ったもので、本当の題は"Vincent"だというではないですか。いや、勉強になります。

出演俳優のなかに、クリス・オダウドとシアーシャ・ローナンがいたのもうれしいおまけでした。本編が始まる前の予告編に、シアーシャの新作"Lady Bird"がかかったのですが、自分でもビックリするぐらい、シアーシャを見ているだけでしあわせな気持ちになりました。

"Lady Bird"予告編
母親に「あなたにはあなたの最高のバージョンになって欲しいの」と言われ、
「これが最高のわたしだったらどうする?」と返すシアーシャ🐞

というわけで、いろいろと発見のあった実験作でした。








どうせならこの人を動かして欲しかったな…。

「火のついたタバコをくわえた骸骨」byゴッホ




2017年9月17日日曜日

“The Eagle Huntress“ 『イーグルハンター 1000年の歴史を変えた「鷹匠」少女』

モンゴルに住むりんごのほっぺの少女が、鷹匠を目指すドキュメンタリー。
女の子が鷹匠になるのはモンゴルでもはじめて。
鷹匠組合の偉い人みたいなおじいさん達が、口では「女が鷹匠なんて許さんけぇ」といいながら、別にアイショルパン(女の子の名前)が大会に出るのを反対もせず、ちゃんと評価してあげるのがいいな。アイショルパンはじめ、みんなおっとりしている。カザフ人だそうです。

鷹の訓練に死んだウサギをずるずる引きずったり、雪山でキツネを狩らせる場面は、先日”PAX”というキツネの物語を読んだばかりなので、キツネに肩入れしてしまう。でもキツネ対イヌワシの闘い、見ものです。

デイジー・リドリーがナレーションをしているよ。

イヌワシもモフモフだけど、アイショルパンたちの帽子もモフモフ。
イヌワシをドラゴン、アイショルパンをデナーリスに見立てて『ゲーム・オブ・スローンズ』ごっこもできるよ。


関係ないけど"PAX"という児童書。
キツネと男の子の切ないおはなし。
邦訳があるのか知らないけど、よかったです。