2009年12月30日水曜日

"Invictus" インビクタス/負けざる者たち


クリスマス前当たりから、賞狙いの話題作がどんどん公開されるので、どれから観ようか迷ってしまいます。(^_^) まずはこのへんから行きますか。

クリント・イーストウッドが、モーガン・フリーマンをネルソン・マンデラ役に据え、1994年に大統領に就任したばかりのマンデラと、南アのラグビーチームとの関係を描いた政治ミーツ・スポーツ映画です。原作は、ジョン・カーリンの著書 “Playing the Enemy”。

2009年12月29日火曜日

Bjork's "Wanderlust" by Encyclopedia Pictura/ビョークの「ワンダーラスト」

今年のクリスマス、母校Cabrillo Collegeで上演される舞台"Scrooge"の美術の手伝いをしたのですが、そこで一緒にペンキ塗りをしたリンダというクルクル巻き毛の美しい、ボヘミアンな女性が、彼女の息子さんがCGやストップモーションアニメの仕事をしている、と教えてくれました。息子さんの所属するクリエイター集団の名前は、Encyclopedia Pictura(エンサイクロペディア・ピクチュラ)。う〜ん、心当たりないな…。早速、彼らのサイト(http://www.encyclopediapictura.com/)にアクセスすると、 "Wanderlust"というクリップが表示されました。



最初、でっかい松ぼっくいと牛のあいのこみたいな動物たちが谷間で水を飲んでいます(舌遣いがかわいい)。それら見るからにおとなしそうな家畜の群れの中に、ひとり人間の少年が紛れてるぞ、と思って観ていると、顔を上げて歌い出したのは、ビョークでした。


メイキングを見ると、牛みたいなクリーチャーは、ラテックスか何かで作った等身大の造形物(目などが動くようになっている)。途中で、松ぼっくいのような毛並みが粘土っぽい動きでうにゅっと伸びていき、ちょっと「もののけ姫」のおっこと主みたいになります。水流のCGによる表現もちょっと粘土っぽくて、おもしろいです。

この作品、ビョークの "Wanderlust"のPVには2D版と3D版の2種類あります。2D版はYoutube等で観れますが、3D版はこちら

3Dメガネで観ると、ちょっと立体的に見えます。3Dカメラ、なんとリンダの息子さん自作なんですって。ニューヨークで試写があり、ビョークも出席したそうな。


エンサイクロペディア・ピクチュラは、サンタクルーズのAptosという町にいます。灯台下暗し…。そのうち訪ねてみたいです。ほかに、「SPORE」というゲーム(「シム・シティ」の作者が作ったゲーム)のプロモーションビデオ(ボツになった)、"How Will You Create the Universe? "や、GRIZZLY BEARの"Knife"のPVなどを手がけています。そして、Zion Iの"So Tall"のPVには、"Fantastic Mr. Fox"にでてくるイタチが登場します。映画の撮影中に拝借したんですって。どれもとてもimaginativeで、inspiring。

▲イタチくん in "So Tall"

彼らは結構注目されているらしく、「エスクアイア」誌の2009年12月号(US版)で特集が組まれました。




現在、3DCGの映画を制作中らしいです。すごい楽しみ…。

2009年12月22日火曜日

"Up in the Air"「マイレージ、マイライフ」

「マイレージ、マイライフ」を観てきました。すでにさまざまな映画賞候補にのぼっている話題作です。

ジョージ・クルーニー扮する主人公ライアンは、会社の役員を代行して、社員にリストラを宣告するのが生業。まあ相当えげつない商売といえます(というかそんなビジネスがあるというだけで暗くなります)が、ライアンは仕事にかけてはゴルゴ13並に凄腕で、しかも出張人生の役得でつくマイレージのポイントを貯めまくるのが、なによりの楽しみだったりします。めんどくさい人とのしがらみや重くて身動き取れなくなる家財道具は一切持たず(一応住むところはありますが、室内は一瞬ホテルと思うぐらい、私物が全くない。1年の300日以上出払っている)機上のバックパッカーのような彼の生き方は、小気味よいほど。「ターミナル」のトム・ハンクスは、嫌々空港を我が家にしましたが、ライアンは喜々として、空港を「マイホーム」とみなしています。同じ価値観を持つ魅力的な女性(ヴェラ・ファーミガ)とも出会い、ライアンの人生航路は順風満帆。ところが、ルーキー社員のナタリー(アナ・ケンドリック)が、オンラインで解雇通告をするという、さらにえげつない方式を提案します。そうなると、エージェントが各地に赴く必要がなくなり、会社的には出張費が浮いて万々歳ですが、ライアンはマイレージを稼げなくなり、楽しい機上生活からつまらない地上生活にしばられることになってしまいます。それなのに、何の因果か上司はライアンをナタリーの「実地研修」のインストラクターに任命します。

2009年12月9日水曜日

"AN EDUCATION"「17歳の肖像」

1960年代のイギリスを舞台にした、少女の成長物語です。イギリスのジャーナリスト、リン・バーバーの短い回想録を、「ぼくのプレミア・ライフ」「アバウト・ア・ボーイ」のニック・ホーンビィが脚本化しています。


2009年12月3日木曜日

「サンフランシスコ国際アニメーション映画祭」その1:"Walt Disney’s Alice Comedies"

11月11日〜15日、「サンフランシスコ国際アニメーション映画祭」が開催されました。一足早く"Fantastic Mr. Fox"が上映され、押井守の"Musashi"(「宮本武蔵 -双剣に馳せる夢-」)の上映もあります。さらに、なんとアヌシーの短編特集があるじゃないですか! 知ってしまったからには、行かないわけには参りません。

"SF Intl Animation Festival"


1本目: "Walt Disney’s Alice Comedies"

これは、「蒸気船ウィリー」以前に、ディズニーが手がけたアニメーション初期作品。実写の少女、アリスが素朴な線で描かれたアニメーションの動物たちの世界に入りこむという体裁を取った短編シリーズものです。

2009年12月2日水曜日

" Chet Baker: Live at Ronnie Scott's London"「チェット・ベイカー/ライヴ・アット・ロニー・スコッツ」

BGM代わりに、オンラインのDVDレンタルで流しました。
ホントは「レッツ・ゲット・ロスト」を観たかったのですが、リストになくて。

チェット・ベイカーは、トランペッターとして−−というより、歌声に惹かれます。初めて聞いたとき、そのフェミニンな声と歌い方に、しびれました。後で顔を見たら、シワがすごくて、エラが張った怖い顔でちょっとガッカリ(^_^;)。最近のウィレム・デフォーが、どんどん彼に似てきてますが、昔のチェットはすごくハンサムでフォトジェニックで、「ジャズ界のジェームズ・ディーン」としてモテモテだったとか。

さて、その怖い顔のアップで始まるライブ映像ですが、演奏を始める直前のピンと張り詰めた表情が、たいへん印象的です。もっと気軽な調子で演奏するのかと思っていました。

ヴァン・モリソンとエルヴィス・コステロがゲストで歌いましたが、ベイカー自身も歌っています。3者3様の味で、それぞれ良かったです。ヴァン・モリソン、初めて見ました。こんな顔なんだ。(^_^) コステロは前歯が一本抜けていたような。3曲ぐらい歌っていて、どれも聴かせましたが、2曲目の歌、よかったなぁ。失恋の歌みたいだったけど、なんていう曲なのかしら。(←後で調べたら"You Don't Know What Love is"でした。チェット・ベイカー自身の歌うこの曲がまたなんとも……。「ブルースが分かるまで君は愛を知らない」っていう歌。ビリー・ホリディがオリジナルかな?)

ところどころ、インタビューが挟まれており、「もうアメリカなんて何にもいいところないし、つまんないし、戻る気ないね」って言っていました。

日本版のDVDが出てるんですね。

2009年11月30日月曜日

"Fantastic Mr. Fox「ファンタスティック・ミスター・フォックス」"


農場から家畜を盗むのが生業のキツネと、彼を捕まえようとする3人の農場主の攻防を軽妙に描いたコマ撮りアニメです。

ロアルト・ダール(「チャーリーとチョコレート工場」「ジャイアント・ピーチ」)の児童書「父さんギツネバンザイ」を、「ロイヤル・テネンバウムズ」のウェス・アンダーソン監督が映画化しました。主人公の父さんギツネ、ミスター・フォックスの声をジョージ・クルーニー、ミセス・フォックスをメリル・ストリープ、息子のアッシュをジェイソン・シュワルツマン、弁護士のアナグマをビル・マーレイ、農場主のビーンをマイケル・ガンボン、用心棒のネズミをウィレム・デフォーが当てています(最後のクレジットで、デフォーのところで笑いが起きていました(^_^))。オーウェン・ウィルソンもちょい役で出ています。

2009年11月24日火曜日

"The Twilight Saga: New Moon"「ニュームーン/トワイライト・サーガ」



話題の「ニュームーン」観てきました!

いやぁ、どのくらい話題かというと、本屋に行けば雑誌コーナーは「トワイライト」の俳優達(たいていロバート・パティンソン)が表紙をほぼ独占しているし、全米公開前の大都市での特別上映時の様子や、公開日前日から映画館前に並んでいる熱心なファンの様子がニュースになったりするほど。「ハリポタ」並の人気です。コスプレしてる人はいなかったけど。


2009年11月13日金曜日

"The Damned United"「くたばれ!ユナイテッド -サッカー万歳!-」

英国サッカーの実在した名監督、ブライアン・クラフについて描いたイギリス映画です。

クラフを演じるのは、「クイーン」ではブレア首相、「フロスト×ニクソン」ではフロストを演じたマイケル・シーンです。同2作の脚本をものしたピーター・モーガンが、本作でも脚本を担当、監督は「第一容疑者6」など、主にTVシリーズを監督してきたトム・フーパー。ちなみにモーガンは、クリント・イーストウッド監督の次回作"Hereafter"の脚本を務めています。

1974年、クラフはリーグのトップクラブだったリーズ・ユナイテッドの監督に就任する。チームをトップに押し上げた名監督、ドン・レヴィを跡を継いでのことだった。だが、リーズは実はクラフにとって、憎っくき因縁のクラブであった。

2009年11月12日木曜日

"A Christmas Carol" 「DISNEY'S クリスマス・キャロル」(3D)


日本より1週間だけ早く、「クリスマス・キャロル」が公開さました。「ポーラー・エクスプレス」「ベオウルフ」で、ロバート・ゼメキス監督が開発・改良してきたパフォーマンス・キャプチャー技術による、3作目の映画です。せっかくなので、3D版の方を観てきました。

スクルージを演じるのは、ジム・キャリー。過去・現在・未来の、3つの精霊もキャリーが演じており、なかでもロウソクがモチーフの過去の精霊は、すごく面白かったです。リアルなCGアニメーションならではのおもしろさですね。今回、原作を離れた、さぞや独自のキャラクター・デザインをしたのだろうなと思って観ていたのですが、帰宅後ウィキペディアで「クリスマス・キャロル」を引いたら、マーレイの亡霊も、精霊も、スクルージの過去の雇い主夫妻も、驚くほど小説の挿絵に忠実でした。

2009年11月11日水曜日

"The Fourth Kind"「THE 4TH KIND フォース・カインド」

青みがかったモノトーンの、寝室を描いたポスター・イメージが「パラノーマル・アクティビティ」と似通っていて、先にこちらを目にしていた私は「パラノーマル」を、すっかり本作だと思い(「あら、題名変えたのねぇ」と勘違いして)観に行ってしまいました。怖がり損ねた「パラノーマル」での教訓を生かし、公開初日の金曜の夜に行くと、狙い違わず劇場は連れだった若者たちでいっぱい。さぁ、みんなで怖がるぞ〜。


2009年11月10日火曜日

"Whip It"「ローラーガールズ・ダイアリー」

トークショウ出演時などの様子から受ける素顔のドリュー・バリモアは、気さくで明るいオプティミストという印象ですが、彼女の初監督作品"Whip It"は、その印象そっくりそのままの、feel so goodでチャーミングな映画でした。

テキサス州のとある街に暮らす17歳の高校生、ブリス(「ジュノ」のエレン・ペイジ)は、ある日親友を誘って、都会のオースティンで開かれるローラー・ゲームを観戦に行く。バイタリティ溢れるローラーガールたちにすっかり魅せられたブリスは、オーディションを受けるため、屋根裏から古いバービーのステッカーがついた子供用のスケートを引っ張り出して、路上での練習にはげむ。小柄な体型を生かしたスピードと敏捷性を買われ、オーディションに合格するブリスだが、困ったことが2つあった。それは、年齢が規定の21歳に達していないことと、両親には内緒にしないといけないことだった。

2009年11月2日月曜日

Coco Before Chanel「ココ・アヴァン・シャネル」&Coco Chanel「ココ・シャネル」


日本では、どちらも既に公開ずみですが、こちらでは、「ココ・アヴァン・シャネル」がただいま公開中です。映画館には、おば(あ)さま方がたくさん見に来ていました。みんなウキウキして、シャネル・ブランドの神通力って凄いなぁ(^_^)。一方「ココ・シャネル」は、TV映画として、去年放映されています。シャーリー・マクレーンが、今年のエミー賞にノミネートされました。


2009年10月31日土曜日

"A Serious Man"「シリアスマン」

「ファーゴ」、「ノーカントリー」の、コーエン兄弟最新作です。
コーエン兄弟はユダヤ系だそうで、1967年のミネアポリスのユダヤ系コミュニティを舞台にした本作は、彼らの少年時代に基づいた、今までで一番パーソナルな作品、と言われています。

2009年10月28日水曜日

"Astro Boy(「ATOM」)"


覚悟して行ったつもりですが、ここまでメタメタとは…。これでは「間違いだらけの『鉄腕アトム』」です(T_T)。

富士山を載っけて地表から浮かび上がった都市が映画の舞台なのは、「これぐらい本作とオリジナルは接点がありませんよ」という製作者側のマニフェストなわけですね。


2009年10月27日火曜日

"Cirque du Freak: The Vampire's Assistant"「ダレン・シャン」


「ダレン・シャン」、観てきました!

なかなか面白かったです。でもレビューは予想外に悪いです。ロジャー・エバート、こういうの嫌いなんだよね…。予告編と、オープニングの、影絵を模したCGアニメの印象が良かったので、好意的に映画を観れたのがよかったのかな。

「ピクサー週間inSC」その4: "Creativity ~ What I Don't Know and What I Know" by Ed Catmull

10月23日 "Creativity ~ What I Don't Know and What I Know"


さて、ピクサー週間のトリをつとめるのは、もちろんエド・キャットムル社長の授賞式ですが、それは一般公開ではありません。でも授賞式の前に、氏の基調講演がありました。

キャットムルは問いかけます——アニメーション作品をつくるにあたり、アイディアと人の、どちらがより重要なのか?

「ピクサー週間inSC」その4:"The Pixar Story(「ピクサー・ストーリー~スタジオの軌跡」"

今夜は、ドキュメンタリー映画"The Pixar Story"の上映と、監督によるQ&Aがありました。会場はダウンタウンにあるデルマー映画館。サンタクルーズ市とサンタクルーズ映画祭の提供で、入場料は5ドル。

会場は満員で、ピクサーの人気ぶりがうかがえます。さきほど大学で講義をしたジョンソン氏も観に来たのですが、劇場側の段取りが悪いためにリザーブ席に座れなくて、照明のそばに座って、監督の挨拶が終わったら親切に照明を消してあげていました(^_^;)。サンタらしい…。


監督のLeslie Iwerks(レスリー・アイワークス)は、ディズニー・スタジオで、ミッキー・マウスのアニメーションや、マルチプレーンの開発にも関わったUb Iwerksの孫にあたり、祖父に関するドキュメンタリー"The Hand Behind the Mouse: The Ub Iwerks Story(ナレーターはケルシー"フレイジャー"グラマーだ!)"を観たラセターが、彼女に本作を依頼したそうです。

「ピクサー週間inSC」その3:"Making Movies is Hard Fun: Building Tools for Telling Stories" by Michael B. Johnson

10月22日 "Making Movies is Hard Fun: Building Tools for Telling Stories" 



Michael B. Johnson氏は、ピクサーのMoving Pictures Groupという、プリプロダクション過程で使うツールを開発する部門の責任者です。

彼らの作ったツールには、例えば、アニメーターが作成したCGの1場面に、監督が直接修正ガイドを書きこめるペンタブレットなどがあります。

「ピクサー週間inSC」その2: "Making of Toy Story" by Mark Henne

10月21日  "Making of Toy Story"

今日は上記の題で、ダウンタウンの新築ビルの階上(1階はずーっとテナント募集中!)で、Mark Henne氏が講演しました。 今回は$10の参加料がかかり、「ピクサー週間」中一番高額なイベントでした。飲み物とおつまみが出ましたけどね(^_^)。

マーク・ヘンネ氏は、UCSC出身で、コンピューター・サイエンスの学位を持っています。ピクサーへは最初インターンに行き、その後1994年、「Toy Story」から正式に社員として参加しており、現在は主に毛髪と布地シュミレーションのスーパーバイザーをしています。

「ピクサー週間inSC」その1:"Tales of Labor and Value: What Works in Pixar Films"


10月23日、UCサンタクルーズ校が、ピクサーとディズニーの社長エド・キャットムルの実績を評価して、功労賞を授与することになりました。で、その一週間は「ピクサー週間」と銘打って、ピクサースタッフによる講演や上映会などがあり、一般参加できるものは、全部顔を出して来ました。面白かったけど、忙しかったわん(^_^)。


2009年10月21日水曜日

"Where the Wild Things Are(かいじゅうたちのいるところ)"


モーリス・センダックの有名な絵本「かいじゅうたちのいるところ」を、「ジョン・マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」のスパイク・ジョーンズが映画化しました。

半年ほど前でしたでしょうか、スチル写真や予告編が少しづつ出回りはじめ、それらを目にしたときから、公開を楽しみにしていました。ときどき、「これを観るまでは死ねない!」って思う映画がありますが、これもそんな一本でした。原作は未読だったので、センダックのファンだったわけではありませんが、何より映像に心奪われました。スチルを観たときは、てっきりかいじゅうたちはCGだと思ったのですが、予告編を観ると、着ぐるみっぽい。2,3度予告編を観て、たぶん着ぐるみに、表情だけCGで加工したんだろうと当たりをつけて、公開日前日にメイキング本を買いこんで確認すると、やはりそうでした。着ぐるみはジム・ヘンソン工房が作り、最初は目や口がうごくアニマトロニクスの頭部だったのですが、あまりに重すぎるので、止めたそうです。

2009年10月15日木曜日

"Paranormal Activity"「パラノーマル・アクティヴィティ」

怖いと評判のホラー映画です。
そして、手持ちカメラで捉えた主観カットのみで構成されるドキュメンタリーを装った手法、さらに15,000ドルという低予算からも、第2の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」ともいうべき作品です。

予告編が、試写会で本作を鑑賞する一般観客の様子を暗視カメラで捉えた映像を使っていて(これ自体が本編の手法の応用。ちょっと"Mystery Science Theater 3000"みたいだけど(^_^))、本気で驚いたり怖がっている彼らの様子に、「これは掛け値なく怖そうだぞ!」と、興味をそそられます。

2009年10月12日月曜日

“Transcending: the Wat Misaka Story”


ワット・ミサカという、1940年代後半に活躍した、知られざる日系二世のパスケット・ボール選手についてのドキュメンタリーです。

Trailerを見たら、ミサカ選手が出場している試合のビデオが映っていたのですが、確かに他の選手より少し小柄な感じだけど、手足がすごく長くて、動きも敏捷そう。

ユタ州の大学でバスケットボール選手として活躍していたワットは、戦争が始まって、他の同胞とともに収容所送りになっても、メンバーとしてトーナメント・ツアーに参加するのを許されます。NYのマジソン・スクエア・ガーデンでの決勝戦で、チームを優勝に導く立役者として大活躍したミサカ選手。地元に戻れば、盛大な歓迎パレードに迎えられますが、その後、収容所に再び戻されるはめに。でも、すぐに兵士として徴収され、原爆投下直後の広島に、調査メンバーとして派遣されます。被害者のほとんどが一般市民であることに、疑問を覚えずにいられないワット。

2年の兵役を終え、大学に戻ったワットを待っていたのは、プロバスケットボールチームのニックスによるドラフト1位指名のニュース。BAA(NBAの前身)で、大学生が指名されたのも初めてならば、白人以外の選手としても、史上初だったそうです。

映画は、ミサカ選手本人、彼の身内、それに元チームメイトらのインタビューと、当時の映像や新聞記事、写真などで構成されています。戦中・戦後の時代、もちろん在米日系人であるワットも、試合中や試合後に罵倒されるなどの差別を受けています。でもチームメイトはワットを100%信頼しているし、コート上での彼の素晴らしい活躍に、率直に声援を送る観客や、マスコミもまた多くいました。あくまでチームプレイに徹する彼の試合ぶりを見れば、選手仲間からの全幅の信頼ぶりもうなずけます。勝利が決まるごとに、決まってミサカを中心に選手達の輪が出来て、もみくちゃになるのが、ほほえましかったです(^_^)。

ニックスでプレイしたのが結果的に3試合に終わったことや(人種的な問題が絡んだ可能性あり)、ミサカ本人の控えめな性格などもあり、NBLの歴史からほとんど抹消されていたミサカですが、このドキュメンタリーがきっかけで、ホール・オブ・フェイムや選手名鑑に登録されるなど、再認識されたそうです。

アートが題材の作品が中心の本映画祭で、異色のテーマだったためか、観客は20人に満ちませんでした。でもたいへん興味深いドキュメンタリーで、いくつか賞をもらっています。各映画祭などで上映されていりますが、まだ配給がついてないそうです。日本の映画祭とかでも上映されたら話題になりそうですけどねぇ。

http://www.watmisaka.com/photos/MSG/msg4.html

"Precious: Based on the Novel Push by Sapphire(「プレシャス」)"

今年のサンダンス映画祭で、グランプリ(審査員賞)と観客賞をダブル受賞という快挙をなしとげた作品。カンヌやトロント(観客賞受賞)映画祭でも絶賛され、アカデミー賞候補の呼び声も高い話題作です。

お話は、1987年のハーレムが舞台。16歳の少女プレシャスは、2度目の妊娠をしていた。父親は、自分の実の父。父は家にほとんど寄りつかず(劇中一度も登場しない)、無職で家事などもすべてプレシャス任せの母親と2人暮らしだ(1人目の子どもは、祖母に預けているらしい)。母親はプレシャスを虐待している。プレシャスは、とんでもなく太っている。友だちもいない。

ある時、オルターナティブ・スクールへの転校を勧められたプレシャスは、そこでブルー・レインという教師と出会う。ブルーは、プレシャスが文盲であることを見抜き、根気よく教育していく。ブルー先生やクラスメート(みんな落ちこぼれの問題児)との交流を通し、少しづつ、殻をやぶっていくプレシャス……。

非常に悲惨な境遇に置かれながら(というかそれ故に)、ファンタジー(つまり妄想)世界に意識を飛ばすことで、かろうじて正気を保っている子ども、というところで、ニール・ジョーダンの「ブッチャー・ボーイ」に通じるものがありますが、こちらはティーンの女の子が主人公なので、夢見るのは、美しく着飾った自分が華やかなフラッシュライトを浴び、理想の男の子と出会うという内容になってます。でも、だんだん、読み書きを覚えたり、他人と交流するようになるにしたがい、自分の本来の姿と向き合うようになります。

「チョコレート」のプロデューサーだったリー・ダニエルズの初監督作品。上映後、監督とブルー役のポーラ・パットン(とても美しい女優さん)とのQ&Aがあり、マライヤ・キャリーやレニー・クラヴィッツが出ているのは監督と友人だったからとか、サンダンス映画祭の授賞式で、まさに登壇しようとしていたところへ、オプラ・ウィンフリーが電話をかけてきたというエピソード(そんなところまで携帯を持ってくるがっついたディレクターとは私のことです、と冗談いってました(^_^))などを語ってくれました。これは、そもそも自分の母親や身内のために作った映画なのだが、こんなにユニバーサルに支持されて驚いている、とのことでした。

原作は、サファイアという詩人の「プッシュ」という小説。小説では、読み書きを覚えたプレシャスが先生に宛てて書いた日記を通し、彼女の自我の芽生えと成長を描いていく、という形式みたいですね。映画では、書くことを通し…というよりも、彼女が逆境に押しつぶされなかったのは、彼女のウィットとユーモアセンス故、と微妙に、映画的にアレンジしています。それで、非常に重い内容にもかかわらず、上映中は幾度も笑いが起きていました。ユーモアは大事だ。ユーモアセンス皆無の、プレシャスの母親は、自分を哀れむばかりで(「誰が私を愛してくれるの!?」)、そんな人には、プレシャスのように、救いの天使はやってこないのです。

監督は、「チョコレート」もそうだったけど、女性が虐待されるのはがまんならないんですって。とても優しげにしゃべる人でした(openly gayだそうです)。プレシャスを演じたギャビーという女性は、これがデビュー作で、監督もポーラもべたぼめ。彼女がレッドカーペットを歩く姿は、フィクションが現実になったようで、とても感動した、と監督は言っていました。最後の方で、プレシャスがとても輝いて見えるのは、ギャビーがそうだからで(役作りのためにしゃべり方や歩き方を普段とまったく変えたそうです)、スタッフも彼女をスターとして扱ったので、この映画で彼女はスターになったんだよ、と熱く語っていました。

観たのは、モントレーのGolden Theater。非常に歴史の古い、アールデコ調の内装が美しい映画館で、サンダンス映画祭の監督で、カーメル映画祭のキュレイターであるジョン・クーパーが、「モントレーにこんな映画館があるなんて知らなかった! 隠れた名所だ!」とリップサービスしていました。でもサンタのデルマー劇場だって負けてないですから。

全米公開は11月末から。

"Carmel Art & Film Festival" カーメル映画祭


"Carmel Art & Film Festival" (http://carmelartandfilm.com/)という映画祭に行ってきました。
カーメルは、サンタクルーズから1時間ほど南下したところにある海辺の観光地です。サンタよりもこじゃれた町並みで、画廊などが建ち並ぶオシャレでリッチな町。昔、クリント・イーストウッドが市長を務めたことでも有名です。

カーメル映画祭は、今年が第一回。サンダンス映画祭のディレクター、John Cooper(ジョン・クーパー)氏をキュレーターに迎え、今年の同映画祭で上映された話題作を中心に上映されます。"Art & Film"と銘打ってあるように、アートに関係する作品が多いのが特徴でしょうか。映画祭が開催された10月8〜11日は、公園でアートフェアが開かれたり、各画廊でアーティストを招き、ワインテイスティングをしながら(ピーナッツバターとチョコレートのように、アートとワインが相性がいいそうです(^_^))、作品を鑑賞したり、アーティストと談笑したり(ほろ酔い気分で気持ちより作品を買ったり)できるようになっています。コンサートもあり、メインイベントとして、アラン・シルベストリ(「フォレスト・ガンプ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」)と、ローカルTVニュースKSBWのニュースキャスター、エリン・クラークとのトークショーがあります。エリンは映画祭のExective Directorの一人なので、映画の上映前に毎回登場して、前口上を述べてました。
ちなみに、イーストウッドはこの映画祭についてはノータッチだそうですが、「べつに全然後ろめたくないよ。いいことなんじゃないの、この町で映画祭をやるっていうのは」と、KSBWニュースで言ってました。(写真は映画祭のオープニングナイトの席で。映画祭のFacebookより)

それにしても、これほど規模の小さな映画祭は初めてです。上映作品は、わずか9本。そもそも、カーメルには映画館がありません! 上映は、Sunset Centerという町の公民館みたいなところ、もしくは隣町モントレーの映画館で行われました。1本25ドルというバカ高いチケット代もどうにかして欲しいです。おかげで、客層は裕福な年配の人たちが90%でした。まあ元々町の住民層がそういう方達なので、運営側も、ご年配の方々ばかり。みなさん上品で優しいのですが、何か肩が凝って仕方がありませんでした、ヒッピータウン、サンタの住民としては。まあ、アートとからめるという特色があるし、毎年サンダンスとコラボするのならば、今後に期待が持てそうです。

私が観た映画は次の通り。
"Precious: Based on the Novel Push by Sapphire"
“Wat Misaka Story”
“Art & Copy”
“September Issue”
Shorts(短編集)

あと映画とはいえないけど、映画制作秘話みたいな、
Lecture Series: Wyeth Documentary

2009年10月9日金曜日

"Zombieland"「ようこそゾンビランドへ」


先週末に公開され、全米1位になったホラー・コメディ"Zombieland"を観ました。
これ、すごくおかしくて、何回も声を出して笑ってしまいました。公開翌週の平日のマチネーだと、どんなにヒット作でも観客は1ケタということが珍しくないここサンタクルーズの映画館で観て、ちょっともったいないことをしました。公開直後の夜に行って、みんなとワハワハ笑ったらもっと楽しかったでしょう。や〜、本当におかしい。「Hang Over」より笑えました。

映画の幕開けから、すでにアメリカ中がゾンビで溢れ、人間は影も形も見あたりません。ナレーターは言います、「ここは合衆国ですといいたいけど、言えない。人間がいないのでは、国と言えないから。ここは、"The United States of Zonbieland"だ」と。続けて、映画は少し過去に戻って、ゾンビが人々を襲いはじめた頃の模様を映し、ナレーターが、ゾンビのはびこる世界で生き残る心得を、挙げていきます。#1、デブじゃないこと、#2、ダブルチェック(ゾンビを確実に仕留めるため、2回は致命傷を与えろという意味)、#3、シートベルトを締めろ、#4、トイレに注意、という具合(順番はちょっと違うかも)。本作はコメディですが、この冒頭に出てくるゾンビたち、かなり怖いし、メイクもエグいです。

そして、やっと声の主が登場します。演じるは「イカとクジラ」の優男くん、ジェシー・アイゼンバーグ。登場早々、本人が、「とても生き残るタイプに見えないよね」と認めていますが、秘訣は、先に挙げた自分で作った心得と、もともと他人と関わらないで生きてきたから、だそうです。

テキサスから、両親の住むオハイオ州コロンバスへ車で向かう旅の途中、彼はもう一人の人間に出会います。それが、カウボーイハットのいかにも強面タイプ、ウディ・ハレルソン。あまり親しくならないように、お互いを「コロンバス」、「タラハシ」と地名で呼び合いながら、道中を共にします。ゾンビ退治がうまいタラハシは、心強い道連れですが、なぜかTwinkieという菓子パンに異常に執着していて、置いてそうな店を見つけては、危険も顧みずに探しに行きます(でも絶対にありつけないというお約束(^_^))。ジョディ・フォスターが、「ハートに火をつけて(バックトラック)」で食べたがった、ピンク色の丸い菓子パンと、同じ会社(Hostess社)の製品です。あと、回想シーンで、子犬と戯れるタラハシのシーンがあるんですが、そこもすごく可笑しかった〜。

で、トゥンキーを探しに行ったスーパーで、思いがけなく、女の子の二人組と出会います。二人は姉妹で、姉はちょっとリンジー・ローハン似のエマ・ストーン、妹(12歳)は、「リトル・ミス・サンシャイン」のかわいいアビゲイル・ブレスリンちゃんが演じています。なんだかんだの末、結局4人はロサンゼルスの遊園地(妹が行きたがっているのと、そこにはゾンビはいないらしいので)を目指すことになります。その前に、ハリウッドに寄り道して、スターの豪邸巡りをしようということになり、今度はタラハシの希望で、ビル・マーレーの、すんごい成金趣味の屋敷にお邪魔して、好き放題。「ビル・マーレーって誰?」という妹に、豪邸内の私設映画館で、「ゴーストバスターズ」を見せるコロンバス。

ここからは、観てのお楽しみです。もう傑作なシークエンスが続くので、書きたいけど、ネタバレになっちゃいますからね(^_^)。監督は、Spike TVの作品などを手がけてきたという若手のルーベン・フレイシャー。長編映画は初挑戦だそうです。

2009年10月8日木曜日

"Capitalism: A Love Story" 「キャピタリズム 〜マネーは踊る〜」

ベネチア映画祭でも話題を振りまいていた(&割といい評価)マイケル・ムーア待望の新作、「Capitalism: A Love Story」を観ました。

私はあんまり英語の聞き取りが得意ではないので、字幕なしでドキュメンタリーを観るのは正直しんどいのですが、この映画の構成自体は、とてもスッキリと、よくまとまっています。最初に、セキュリティカメラに映った銀行強盗たちの映像をモンタージュで見せ、「大企業の金持ちたちがこれと同じことをやっていますよ」といいたいのだな、とセリフなしで伝えてくれるので、助かります。つまり、ムーアの映画は、大衆向けに、分かりやすく作ってあり、決してインテリさん向けではないのです。

で、本作で何を学んだかというと、資本主義とか、今回の経済危機の原因についての新しい知識とか見方よりも(そういうのは、ちゃんとニュースをある程度見聞きして、メディアリテラシーがある人ならば、この映画にでてくることはさして目新しくはない。それでもすごくよくリサーチしてあり、うもれていた事実なども明かされていますが)、マイケル・ムーアについての理解が深まりました。

彼は、骨の髄までアメリカンな考え方と行動様式を持つ男。そして、すごい愛国主義者です。なにより、自分の地元が大好き。たいへん大きなテーマを扱っていても、彼の目と心は、地元ミシガン州の町、GM社のお膝元フリントから、一歩も動きません。取材相手も半分が、彼の身内や知人や同郷の人でした。どこまでも、庶民目線、フリント住民目線を貫いています。もっとジャーナリスティックに、こういった問題を理解したいと思ったら、CBSの「60ミニッツ」とか観る方が、きっとタメになる。

さて、本編中いちばんショッキングだったのが、世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートが、自分の従業員に保険をかけ、もし若く有能な社員が死亡した場合、同社は大きな損失を被ったとみなされ、多額の保険金を得るというシステム。でも、遺族にはビタ一文払わないので、働き手を亡くした遺族は困窮にあえいでいるのです。この保険の存在を知ったときの、遺族の人たちの顔……。そして、この保険の呼称が、「Dead Peasant(死んだ小作人)」。うーん、なんか今のアメリカで、吸血鬼映画やTVドラマが大流行なのが、分かる気がする。いるわ、吸血鬼。今ではさすがにその呼び方だけは止めたそうですが。

あと、すごくシンプルにいうと、映画の中で、レーガン(とブッシュ)大統領が悪の根源、大企業の味方なのに対して、フランクリン・ルーズベルト(とオバマ)大統領が正義の人、庶民の味方という二極的な構図になっています。FDRが、「Second Bill of Rights」をモノクロの映像で読み上げる内容が、とても理想主義的で、印象的でした。もしこれが、実現していたら……(ルーズベルト大統領の死によって、実現しなかったのだそうです)と、マイケルは訴えたいのでしょう。もしゴアが勝っていたら……。もしオバマが勝っていたら……。(最後のは実現したので、オバマがんばって欲しい。道半ばの死に注意だ)

あまり目新しい事実などが提示されない前半は、ちょっと退屈。でも、後半、「分かった、分かった、今の資本主義とアメリカが、すごく間違ってるのは分かった。でも、じゃあどうしたらいいわけ? 解決策は? 社会主義? (ペイリンはオバマの国民皆保険制度を「すごく社会主義的に聞こえるわ!」と言ってました) そうなの?」って思いながら観ていると、マイケルはずばりいいます。「民主主義が答えだ」、と。

前の座席に、年配のご婦人がひとりで座っていたのですが、いかにも感に堪えない、我が意をいたりというように、映画を観ながらブツブツ同意したり、驚いたり、ミニ感想を言っているのが、おもしろかったです。わたしもそういうことができるぐらい、100%聞き取れたらなぁ。

2009年10月5日月曜日

"The Informant! (インフォーマント!)"

スティーヴン・ソダーバーグ監督、マット・デイモン主演の「インフォーマント!」は、ベネチア映画祭で上映され、華々しくマットや監督がやって来ましたが、アメリカ映画はアメリカに戻ってから観ればいいと思い、レッドカーペットだけちょっと見て本編はスルーしました。帰ると、さっそく上映しておりました。

さて、この映画、題材のひそみにならったのか、ひとくせもふたくせもあります。

タイトルバックから、それを象徴しているのが、リールテープをnagraの再生機にセットする様子をクローズアップでとらえた、シリアスなスパイものに相応しいシークエンスに、マーヴィン・ハムリッシュ(「コーラスライン」「スティング」「007 私を愛したスパイ」)の陽気でレトロチックなBGMがかぶるミスマッチ。

これはまんま、大企業の不正を暴く大仕事に臨むうえでの、FBI側のどこまでもクソまじめな態度と、主人公であるマーク・ウィテカー(マット・デイモン)の、事の重大さにそぐわない、スパイごっこ気分のような、アマチュアくさい態度(アマチュアなんだけど)との、温度差を表しているといえるかもしれません。

実話なんだそうです。トウモロコシを扱う大企業の不正を内部告発した男の話、ただしコメディタッチ、ということだけは、前知識で知っていました。

で、のっけから混乱したのが、時代設定。音楽同様に、映画のルックもレトロに仕上げてあり、70年代や80年代の作品のような、粒子が粗く色の発色が悪い、ピントの甘い映像になっていて(ポスプロでやったのかしら、それとも昔の機材を使ったのかしら?)、そのへんの時代の話なのかな、と思ったら、しばらくして、マークが「マイケル・クライトンの小説みたい」とか言ったり、ゴツい携帯電話を使ったりするので、90年代はじめぐらいの話なんだなと分かるのですが、だとすると、時代設定よりもさらに古い画面作りをしていることになるけれど、何故なんだろう。時折出てくる地名のキャプションなどは、さらにサイケ調な書体だし。それくらいマットが時代とズレたところにいた、ということかな? 今回そういうスタイルで攻めてみたかったのかな。

企業の陰謀を曝く内部密告者の話となれば、話も結構複雑です。しかも、マークが言うことはどれが本当でどれがウソなのか分からなくて、FBIもすっかりだまされてしまうほど。口先だけで、まんまと社会や大組織を何年もだまして世渡りをする実在の人物、ときどきいますね。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」のディカプリオ扮する詐欺師しかり、「ニュースの天才」の記事をねつ造した新聞記者しかり。大きなウソほどばれにくいと申しますが…。この社会(特にアメリカ)がそもそも虚構の上に成り立っているため、ある種のウソを構造的に「キャッチ」できないのではないか、という気がしてしょうがありません。それで、輪をかけて観客の脳みそを忙しくさせたいのか、FBIや取引先との大事な打ち合わせの最中に、マークがぜんっぜん関係ないことを独白するんですよ。毒を持つ蝶がどうのこうのとか、白熊の鼻が黒いのはどうのこうのとか、「トロ」という言葉は日本ではどーのこーの。うんちく君だったんですねぇ、マークは。彼の頭の中の一部では、いつも現実とは違う世界が展開していたのでしょうか。おかげで、字幕欲しい度200%でした。

ところでトウモロコシ会社(ADMという会社名)の不正、各国の競合会社と談合して価格操作してるんですが、味の素もからんでいます。それで、東京ロケもちょっとやっています。どこのホテルかなあ。ハワイでゴルフ接待とか、いかにもなシーンも出てきます(^_^)。

マークを演じるマット・デイモンの役作りも見物です。レネー・ゼルウィガーなみに増量したのも凄いけど、本人がそうなのか、歩き方が変わってて、いかにも運動とは縁のないホワイトカラーの中年ビジネスマン風で、とても「ボーン」シリーズの人と同一人物とは思えません! あと、FBI捜査員の二人組(いい奴ら。告発後のマークの身の上を本気で心配しています。本人は、「社長になる!」とかお気楽なことを言ってましたが)に扮する役者、2人とも良かったですが、そのうちの一人を演じているジョエル・マクヘイルという役者は、この秋のNBCの新番組「Community」で主役に抜擢された人でした。コミュニティ・カレッジを舞台にしたコメディで、チェビー・チェイスや、「ハングオーバー」で日本のヤクザのボスみたいな役を演じて、強烈な印象を残した中国系(かな?)の小柄なおっさん俳優(名前は覚えてないです)なども出ている、注目の番組です。

2009年10月1日木曜日

「Cloudy with A Chance of Meatball (くもりときどきミートボール) 」

3DのフルCGアニメ。予告編を見たとき、あんまりいい印象を受けなかったのですが、いや、予想を裏切って、すごい好き。なんというか、「全問正解!」という感じでした。「UP!」より好きかも。

まず、最初の一歩から、この映画とのシンクロ率200%です。コロムビア映画のロゴの、自由の女神像の上に降ってくるバナナや、"Filmed by lots of people"っていうクレジット(普通は監督の名前が出る)も気が利いてますが、それよりも、プロローグ。不器用な私は、普段いつも靴のひもがほどけてしまい、日に何度も結び直すのですが、発明家志望の少年、ブラントは、この人類共通の難問を解決する発明をします。それは、スプレー式の靴! Genius! How convenient! ……でも、ひとつだけ難点があり、それは、脱げないこと。こんな調子で、ブラントはいつも素晴らしい発明をするのに、惜しいことに、どこか一本ネジがはずれてて、みんなにバカにされています。さて、一方傷心のブラント少年を優しくなぐさめる母親は、息子に白衣をプレゼントします。目を輝かせ、「僕は立派な発明家になる!」と、裏庭の自作研究室にこもり、ますます発明に励むようになるブラント(そういえば「Tetsuo」のスタッフに、白衣が大好きな、特殊造型スタッフの青年がいたっけ)。少年のベッドルームの壁には、ロックバンドやスポーツ選手のかわりに、発明家たちのポスターが貼ってあります。テスラが憧れのヒーローの少年が主人公なんて、うーん、マニアック過ぎる。

さらに、ロケーション設定も、シンクロ率高し。地理的には、大西洋に浮かぶ小さな島という設定ですが、昔いわし漁で栄えた町が、需要がなくなったために今はすっかりさびれてしまったというところが、サンタクルーズから車で1時間ほど南下したところにある、モントレーにそっくり。モントレーは、スタインベックの「缶詰横町」の舞台になったところです。「ミートボール」に出てくる市長の考えと同じように、缶詰工場跡を観光に利用しようとし、映画と違い成功しています。今ではモントレーといえば、水族館と、ジャズフェスティバル(イーストウッドも常連)で有名です。

あと、好きなのは、映画の最初の方、ブラントが少年から青年になる過程で、エピソード的にチラッとだけ言及される、彼の発明品の数々が、(増毛スプレー意外)後で全部生きてくるところ。靴は結局脱げなかったらしく、ずっと履いてるし(^_^)。

ところで、アメリカ人て、ほんとスプレーが好きだと思う。スプレー式のチーズとか(私も愛用)、スプレー式のホットケーキミックスとか(きのう作って食べた)、スプレー式の芝生とか。

予告編で、抵抗があったのは、食べ物を粗末にあつかっているところ。空からぼとぼと、ハンバーグやスパゲティが落ちてくるなんて、もったいなさ過ぎるし、それを食べるなんて言語道断! さすが、平気で靴を履いたままベッドにあがる習慣の人たちは、やっぱり無神経だわ、わたくし耐えられません、オホホって思ってたのですが、実はまさにそこが映画のポイントで、無自覚な飽食、「もっと、もっと」と欲しがる貪欲、さらにはジャンクフードの危険性をいましめる展開になっておりました。でも、最後の方に出てくる、おっきなガミーベアくんたち(凶暴)は、ちょっとかじってみたいと思ってしまいました(^_^;)。

さらに、裏テーマみたいになってるのが、肥満問題と同じぐらいアメリカを蝕んでいる「人気者になりたい」病。いつもバカにされてきたフリントが、「ビッグになりたい」願望に取り憑かれた市長(声はブルース・キャンベル!)の「みんなの人気者になるぞ」という甘言にそそのかされ、GFや実直な父親の言葉に耳を塞いで、市長のいいなりになったために、大変な事態になってしまいます。また、NYからやって来た新米お天気キャスターのGFは、少女時代はフリントと同じようなオタクでしたが、仲間はずれにされないために、無理に自己改造した過去があります。でもフリントに会って、本来の自分を取り戻します。で、その表現が、眼鏡をかけて、ポニーテールにする、というものなのですが、声をアテているアンナ・ファリスが主演した「House Bunny」と真逆というか、同じで、それでファリスなのか、と腑に落ちました。でもまず、眼鏡にお下げ=オタク女子、メイクしてファッショナブルに装えば速、頭空っぽの軽薄なイケイケイねぇちゃんに変身、という、外見が内面を支配するという集団幻想から、そろそろ脱皮しましょうよ。

キャラ的には、フリントの父親(ジェームズ・カーン)がすごくいいです。口べたで、なんでもいわしに例えないと思いを伝えられないので、息子とうまくコミュニケーションがとれません。それに、すごい機械音痴だから、ガジェット好きの息子のことも分かってやれない。発明家になるなんて夢をいつまでも追ってないで、自分のいわしショップを手伝って、地に足をつけて欲しいと思っています。禿げ頭にぶっとい一文字眉毛という外見なのですが、眉をぐいーって上げると、目が見えます。

この映画、3Dらしいですが、近所の映画館では普通の2D上映でした。それでもしばしば、実写かしら、って思うくらい、バックグラウンドが立体的に見えたりしました。建物など、すごいスーパーリアルなマッピングというわけでもないのにね。

アメリカでは2週連続1位の快挙ですが、同時公開の日本では、なんだかランクインしていない様子。やっぱり、感覚的、文化的に違和感がぬぐえないのかしら? SNLのダン・ヘイダーが主人公の声を当てているからというわけでもないだろうけど、ギャグ的にもかなりイケてて、例えるなら3DCG版「ハングオーバー」って感じでした。


「Monsters vs Aliens モンスターvsエイリアン」
3DCGつながりで、見損ねていた「モンスターvsエイリアン」が、昨日DVD発売されたので、借りてきました。「ミートボール」には負けるけど、こちらもなかなかのマニアック度(^_^)。

スーザンのもとネタ、「Attack of the 50 Foot Woman(妖怪巨大女)」は、こないだベネチア映画祭で観た、ジョー・ダンテの5時間に及ぶ、版権無視コラージュ作品"Movie Orgy!"の中核をなしていました。不実な夫にかえりみられない、哀しい妻が宇宙人によって巨大化される、というお話しに、ビックリしながら見ていました(ベネチアくんだりまで行って何観てんだか)が、その設定を踏襲していますね。巨大化した花嫁、スーザンが地面に倒れ、顔の所に小さい夫が立ち尽くしている構図、「マクロス」とそっくりなんですが、と指摘したら、年がバレるでしょうか。

人気も車もない、空っぽのサンフランシスコの街並みなんかも見どころの一つですね。コメンタリーを聞いていたら、そこの場面はスーザンが叫びっぱなしなんですが、リーズ・ウェザースプーンに、60分間分、叫び演技をさせた録音テープがあるそうです(^_^;)。SFを選んだのは、ハリーハウゼンの巨大タコ映画「水爆と深海の怪物」のオマージュかしら。

2009年9月28日月曜日

"9" 「9 <ナイン> 〜9番目の奇妙な人形〜」


ティム・バートンがプロデュースを務めた作品です。
2,3年前、アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた10分程度のCGアニメが原作で、作者はシェーン・アッカー。これを観たバートンがいたく気に入って、長編作品に仕上げたのですね。私も当時、上映会などで二度ぐらい、元の短編を観ましたが、あまりピンと来ませんでした。眼がないですね。

かなーり期待して観にいきました。ベネチア映画祭に行っていた間の、9月9日の公開だった(当然!)ので、早く帰って、観たくて仕方ありませんでした。

お話しは、人類どころか、生き物がすべて死滅してしまった世界。ある科学者が発明したマシンが原因です。科学者は、自分の取り返しのつかない失敗を償おうと、最後の力を振りしぼり、9に命を吹きこみます。自分の命を…。9とは、小さな麻袋の人形で、お腹の所にジッパーが付いており、開けるとなんだかゼンマイ仕掛けの、錆びついた感じのガジェットが入っています。9は最初、気がついた時は、自分が誰で、どんな目的があるのかなど、いまいち分かっていない様子。でも、自分と同じ姿の仲間と出会い、その直後、紅い眼が光る、ガイコツの恐竜みたいな機械の怪物に襲われ、せっかく出来た、いい感じの友達(「2」)を失ってしまいます。「2」は自分たちの使命も、「9」が持っていた緑色に光るコンパスみたいなタリスマンの用途も、知っているようだったのに…。やがて、9は他の仲間、1〜8達と会い、徐々に自分の役割を知ることになります。

映画の冒頭は、麻袋を縫って、人型を造る手のアップで、まるで「コラライン」みたいです。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」で、すたれかけていたストップモーション・アニメーションという手法を甦らせたティム・バートンが、とうとうCGに行ってしまったかと、ちょっと哀しいものを感じました。まあ、CGはどんどん進化して、ストップアニメーションっぽいビジュアルやテクスチャを、かなり再現できるようになったし、ストップモーション側でもデジタルを積極的に取りいれ、「コラライン」などは人形の顔の上下に入った線を消したりと、パッと観、逆にCGっぽいなめらかなテクスチャを施したりして、なんかどっちでもいいや状態になりかけてますからね、一部では。一方もうすぐ、なぜかウェス・アンダーソンが作ったベタベタな感じの長編ストップモーション・アニメが公開されるので、どんなものか、興味津々です。

さて、「9」ですが、基本的なストーリーと設定は、短編をほぼ膨らませた形になっていました。短編を観たときに疑問に思った、「この麻袋のみじめな人形たちは何?」「どうして動いているの?」「どうしてガイコツの恐竜みたいのに襲われて、魂を吸い取られてるの?」「恐竜を倒して、仲間の魂を解放して、その後、9はどうするんだろう、この生き物のひとっこひとりいない世界で」といった疑問に対し、とってつけたようなバックストーリーが与えられていますが、やっぱりなんだか、見終わってもモヤモヤしています。短編との最大の違いは、「9」たちがしゃべることかな。良しにつけ、悪しきにつけ。でも、声優の配役はとてもよかったです。イライジャ・ウッド、ジェニファー・コネリー、ジョン・C・ライリー、クリストファー・プラマー、クリスピン・グローヴァー、マーティン・ランドー…。

ビジュアル的な世界観は、素晴らしく、それだけでも観る価値十分です。スチームパンクならぬ、縫い目の目立つ、9達にちなみ、「スティッチパンク」だそうですよ。言い得て妙です。場面、場面もとても興味深いです。特に、一旦訪れた休息場面に蓄音機から流れる、「オーバー・ザ・レインボウ」の曲、それに合わせ、水平線の向こうからゆっくりやってくる、○○の場面。いいなぁ。

話の展開や、予告編のノリなんか、「サイボーグ009」ぽかったですが、どっちかというと松本大洋の「ナンバー5」に近いメンバー構成でした。双子がいたり。あ、それだけか。

その後、改めてオリジナルの短編を見直しました。やっぱり、よくわかんない世界でしたが、動き(アニメート)が非常に素晴らしいし、テクスチャも、ばっちり書き込んだ長編に比べればあっさりしていて、イラストっぽいところが、却っていい感じです。なるほどね。やっぱり私は眼がない。短編としてあっさり完結しているので、なんだか命をもたない無機物達が、大切な命を奪いあう、みたいな骨子をなんとなく想像できなくもないところが、長編より、優れていたかも。

<12/18>
PS3の「リトルビックプラネット」にはまっています。リビッツ(Sackperson)、ナインたちそっくし…。

"Surrogates"「サロゲート」

「サロゲート」という映画を観ました。SFで、グラフィック・ノベルが原作だそうです。主演は、ブルース・ウィリス。監督は、「ターミネーター3」「ハンコック」のジョナサン・モストウ。

近未来、ロボットと神経を接続して、遠隔操作で自由に操る技術が開発されたため、人々は喜んで日々の生活を自分の「代役」、もしくはアバターであるロボットに肩代わりさせ、自分は日がな一日、歯医者さんの診察台みたいな椅子に座って自宅にこもっているようになりました。すでに人類の99%がそういう生き方を選び、街行く人々はロボットばかり。生身で暮らす道を選んだ人々は、サロゲート・ロボットたちを「人形」と呼んで忌み嫌い、「予言者」と名乗るリーダーのもと、隔離地域で細々と共同生活をしています。ある日、ロボットの殺人事件が起き、操作していたオペレーターごと死んでしまいます。これは起きてはならない事態で、警察はパニックを防ぐために極秘で調査を進めます。任務に当たるのは、サロゲート版ブルース・ウィリスと相棒のラダ・ミッチェル。

サロゲートのウィリスは、金髪のかつらで、お肌もスベスベ(毛穴もシミもシワもなく、すごい厚塗り&特殊メイクなのか、もしくは「ウルトラバイオレット」みたいにデジタル修正しているのかな?)、スラリとして服装もパリッとしています。最も、町中のどこを見渡しも、そんな人々ばかりです。ここでひとつ疑問。どんな外見のロボットを選んでもいいので、たとえばふるいつきたくなるような美女が、実は中年の冴えないおっさんだった、ということも、映画の中ではあるのですが、ウィルスのように、自分のフォトショップ加工版みたいな姿を選ぶ人も多いみたいです。そういう人はナルシストなんだろうか? やはりアイディンティティの問題だろうか? でもさ、案外、結構同じ顔がたくさん歩き回る結果になるんじゃないの? 女はスーパーモデルとか、人気の女優さんとかにそっくりなロボットを選び、男はスポーツ選手のロボットを選ぶとかさ。アンジェリーナ・ジョリーそっくりのレジ打ちのおばさんとか、マイケル・ジョーダンそっくりのタクシーの運ちゃんとかが、街に溢れたりしないのかなぁ。そもそも、すごい運動能力が手に入るんだから、みんな大人しく会社員とか地味にやってないで、ロッククライミングしたりサーフィンしたり宇宙に行ったりしないのかな? いや、ロボット代を払うために働かなきゃいけないのか…。本体がトイレに行きたくなった時はどうするのかな? 椅子に座ったまま用を足すようになっているのかな、それとも突然ロボットが止まって、その間トイレに行くんだろうか。そうか、ロボットをトイレに行かせて、その間自分もトイレに行くのかな。ロボットの視覚を通して物事を見れるようになっているようだけど、事故で胴体が千切れたりしても痛みは感じないようになっているらしい。でも男女でいちゃついたりはしているから、触覚や性感は感じられるらしい。でなければ、サロゲートを選ぶ意味がないものね。まあ飲み食いはだけは生身でするんだろうけど。というと、外食は100%なくなるのね。デートはどうするんだ……なんて細かい疑問に観客が悩まされないように、システムの説明は、最初の2,3分で、大急ぎで流しちゃってるところがカワイイです。

サロゲートシステムの生みの親の科学者を、ジェームズ・クロムウェルが演じており、テクノロジー化の進んだ世界の描写も、青と白と黒が基調で、「アイ、ロボット」っぽいです。あと、ウィリスの奥さんとかが、「ステップフォード・ワイフ」を想起させました。でもいくつかレビューを読んでみると、「ブレードランナー」や「マトリックス」を引き合いに出している人が多かったです。

かなり大ざっぱな設定だけど、自分だったらどうするか(サロゲートシステムを受け入れるか拒否するか)とか、セルフイメージの問題とか、ネット中毒問題とか、考えると面白いです。この映画のスタッフたちの思い描く、若く美しい人々の世界は、白人か黒人しかいないみたいだったのが、なんか本音でてるなぁ、みたいな感じでした。

バーチャル・リアリティの世界が現実化した、みたいなテーマの、同じような映画「Gamer」も観たかったのですが、サンタクルーズでやっていなくて、まだ観れていません。レビューが非常に悪くて、それに比べると「サロゲート」はまあ評価されている方かな。

2009年8月29日土曜日

"Inglourious Basterds"「イングロリアス・バスターズ」

話題のタランティーノ最新作"Inglourious Basterds"「イングロリアス・バスターズ」を観ました。

タランティーノの映画は、どんどん一筋縄ではいかなくなっていく感じです。普通なら、映画を台無しにしてしまうような、いろーんなことをやってるのに、一本筋が通ってるのが見事で、それだけでも監督としての手腕を証明していると思うけど、今回はそれだけじゃない、と何人もの批評家は絶賛しています。

タランティーノの映画って、はんぱじゃないバイオレンスがトレードマークだけど、それだけなら彼以外にも、バイオレンス描写で鳴らした監督はいます。QTが特異なのは、実はバイオレンスよりも、登場人物達がすべからく詭弁を弄して、物事を自分に有利に運ぼうとするところ。本作でもその特技が遺憾なく発揮され、暴力が勃発する前に、どいつもこいつもしゃべる、しゃべる、しゃべる、しゃべる。おかげで上映時間2時間半よ。そんななか、ヒロインの女映画館主だけは、不言実行タイプ。彼女が行動を起こすときに流れるデヴィッド・ボウイの曲がしびれます(確か「キャット・ピープル」の歌だと思う)。

ゲッペルスには、フランス語の通訳(兼愛人)が付いていて、「キル・ビル」の腕切られちゃう通訳へのセルフリファレンスだなあ、と思ったら、同じくジュリー・ドレフュスでした(^_^;)。彼女の連れてる大きなプードルがかわいいです。マイク・マイヤーズも老けメイク、なぜ彼?という役どころでゲスト出演しています。

QTがコナン・オブライエンの「トゥナイト・ショウ」に出た回を見ていたら、ドイツで撮影した時、「タランティーノ」という彼のファンが集うバーがあるのを知り、顔を出したら、店主はあわてず騒がず、「あなたのバーへようこそ!」と手を差し出したそうです。でも、店が持ってる彼のDVDが「キル・ビルVol.2」と「デス・プルーフ」だけで、しかも後者は傷が入っているために、10分ぐらいですぐ最初に戻っちゃうんですって。

本作は、「地獄のバスターズ」というB級イタリア映画を下敷きにしているらしいです。でも、なぜ原題の綴りをわざと間違えているのかは不明。

本作を貶している評で面白かったのは、「この映画はブロードウェイの観客が"Springtime for Hitler"を観る時の態度で臨むしか救いはない。あんまりひどすぎるので、いい作品だと逆に錯覚してしまうのだ」、というもの。"Springtime for Hitler"って、メル・ブルックスの「プロデューサーズ」の劇中劇です、念のため。

"Taking Woodstock"「ウッドストックがやって来る」


"Taking Woodstock"という映画を観ました。
あの伝説的な音楽イベント、ウッドストックにまつわる映画です。

お客さんが、すごい年配の人ばかりでした。だって、考えてみたらウッドストックってもう40年も前の出来事なんですもんねぇ。私はウッドストックというと、音楽イベントよりスヌーピーの相棒の鳥さんを連想する世代です。

予告編を見て、小さな田舎町にある時音楽イベントが開かれることになり、ヒッピー達が大挙して押し寄せ、町の人々は大あわて! みたいな、ラブ&ピースの町おこしムービーかな、楽しそうだな、と思って観に行ったのですが、それだけの映画ではありませんでした。なんたって監督がアン・リーですからねぇ。

主人公は、商売っ気のないモーテルを営む両親を手伝う若者、エリオット(コメディアンのディミトリ・マーティン)。負債を抱え、今年の夏じゅうになんとかしないとモーテルをたたむしかないという状況の中、ヒッピーがロックコンサートの会場を探しているという記事を読んで、飛びつきます。電話一本で現れたのは、ヘリに乗った巻き毛の青年プロモーター、マイケル・ラングとそのご一行。日常に突如侵入する、非日常。いいですね、ワクワクしますね(淀川長治か)。近所の農場主ヤスガ(ユージン・レヴィ)の土地を会場に使うことに話がまとまります。

物語は、コンサートの準備の様子に大半を割き、いよいよ本番が始まると、演奏したミュージシャンたちの場面は一切出さずに、40万人の人々が一カ所に集った当時の3日間の雰囲気を伝えることに焦点を当てて、当時の実際の映像と、この映画のために再現した映像とを、映画「ウッドストック」のスタイルを取り入れつつ混ぜて編集しています。特に、初日の夜、エリオットが会場をやや離れたところから見下ろすと、ステージを中心に無数の人々が取り囲んでいるCGによるモブシーンが、集まった人々の多さを感じさせて印象的でした。

なぜか会場で一人颯爽と馬を乗り回し、イベントの成功を露ほども疑わないマイケル・ラング(実在の人物)や、若いときの辛い体験のせいで守銭奴になってしまったエリオットの母(イメルダ・スタントン)、その母を愛してると言い切る父親など、どの登場人物も一癖あって面白いですが、リーヴ・シュライバー扮するトランスヴェスタイトの元海兵隊員が、出来事から一歩引いて主人公を暖かく見守る役回りで、よかったです。スカートをめくると、ピストルを隠して持っているのだ。変にクネクネしたり、化粧したりしない潔いトランスヴェスタイトです。

ところで、この映画を観たNickelodeonという映画館も、ちょうど営業40周年を迎えたそうで、公開前の深夜、本作を特別上映してお祝いしたそうです。映画館をはじめた頃は、サンタクルーズは「リタイアしたお年寄りが死にに来る町」と言われていたそうで(ヒドイ)すが、サンフランシスコでも映画館を経営していたその人は、UCサンタクルーズ大が出来たのを機に、この町も変わっていくだろうと予測したのだとか。予想は当たり、今のサンタクルーズはお年寄りも多いけど、サーファーや学生も多い(変人とホームレスも)、活気のある町です。

私、昨日てっきり金曜日だと思っていて、そのイベント行き損ねちゃった…とほほほほ。最近ちょっと日本とやりとりしていたからなぁ。今度、とある映画の祭典に行くのですが、ちょっとしたトラブルが起きているところなので、こういう、みんなで細かいこと気にせずラブ&ピース! みたいな祭典、すごくいいなと思う。実際はいろいろあったとしてもさ、そういう気持ちをみんなで持って集まるみたいの、いいじゃん。

2009年8月28日金曜日

"District 9"「第9地区」

ピーター・ジャクソンのプロデュース作品"District 9"を観ました。SFです。

舞台は、南アフリカのヨハネスブルグ。20年前に突然UFOが飛来し、そのままずっとヨハネスブルグ上空に停滞しているという設定で、UFOに乗ってきたエイリアンたちは、「9地区」と呼ばれる一角に隔離・収容されています。UFO、エンコしちゃって動けなくちゃったんだそうで。エイリアンたちは昆虫に似た外見で、高度な科学力を持ちながら穏和な性格らしく、人間たちに手荒にされても抵抗しないで大人しく従っています。居候としての立場を弁えてるみたいです。主人公は、ワイカスという30台ぐらいの役人(「未来世紀ブラジル」の主人公を彷彿させる)で、エイリアンたちを、さらに町から離れたキャンプに移す手続きを執行中。エイリアンたちには何の関心も持たずにお役所仕事をこなすのだが、不注意でエイリアンの薬物に触れて、体に異変を来します。そのために人間たちに追われ、9地区に身を隠し、とある理由で利害の一致したエイリアンの一人と協力して行動を共にするようになります。

エイリアンはCGIなんですが、「GーForce」に続き、実写との合成も違和感がなく、CGだということをともすれば忘れがちです(いくつかの場面では着ぐるみも使ってると思う)。でも、映画全体はB級テイストというか、さすが「怒りのヒポポタマス」の監督がプロデュースしているだけあって、グロいです。スクリーンにホースで水ぶっかけて洗ってあげたくちゃいます。

映画を観ている者たちは、「9地区」の様子からアパルトヘイトや難民キャンプを連想せずにはいられないようになっています。情け容赦なくエイリアンを追いたてる主人公に感情移入など出来ないし、ゴミの山を漁り、猫缶でくいつなぐエイリアンたちをことさら惨めったらしく、不潔に描いて弱者と強者の構図を強調しています。

展開が読めないため、上映時間が非常に長く感じ、見終わったらぐったり疲れました。でも、すごく面白いです。後半は、日本のロボットアニメ、「ガンダム」や「エヴァ」を観たときと同じような興奮を覚えます。主人公が年食い過ぎだけど。ラストのいじましさも好きです。

それにしても、もうすぐ「9」も公開になるし、今年のキーナンバーは「9」ですかねぇ?

2009年8月15日土曜日

"Ponyo" 「崖の上のポニョ」

"Ponyo"を観ました。
公開初日の第一回。いさんで映画館に駆けつけたら、最初、あんまり人が入ってないなあとちょっとガッカリ。でも、そのうちわらわらやって来ました。もちろん子連れが主要な客層です。こっちの人は、結構ギリギリにどわっと来るんですが、いつもは予告編を延々やってるからまあだいたい本編が始まる前には腰を落ちつけられるのですが、今回は予告編がたったの一本だけ(サンダンスのクロージングを飾ったエコドキュメンタリー)で、トトロのロゴがパッて映ったと思ったらもう始まっちゃったので、間に合わなかった観客がいっぱいいたし、私もちょっと心の切りかえにもたつきました。でも、クラゲに続き、ミジンコたちのマリンスノーとともにどんどん画面が海底に降りていき、なんだかマイケル・ジャクソンを連想させるお父さんがお仕事をしている(海中だから動きが緩慢)セリフや効果音のない一連の描写に、文句なく圧倒されます。
いつもは空が舞台のお話や描写が得意な宮崎監督が挑戦した、CGに一切たよらない水や海の描写が、とにかく素晴らしいですね(水と火の描写はセルアニメが最も不得意とするところ)。黒い線だけで、バケツに汲んだ水の表面を表現したり、メタモルフォーゼしたり、ゲル状になったりする水。こういう多彩な表現は、一朝一夕でできるものではないでしょう。本編の80%ぐらいに水が出てきて、すごい作画枚数だったろうな。
往年の宮崎作品を連想させるシーンもところどころに出てきます。クラゲを被って水面に向かっているポニョはオームの眼の抜け殻をキャノピーにするナウシカを思い出させ、海底をさらう網から逃げるポニョの様子はお城の下水施設にもまれるルパンみたい。千尋が階段を駆け下りるシーンを連想したシーンもあったな。

吹き替えは、いつもは暗い役ばかりのリアム・ニーソンがお父さんをアテてるのが面白かったです。「センセイ」「ツナミ」はそのまま日本語でした。

相変わらず、食べ物の描写も丁寧で、ポニョと宗介が飲むスープ(?)とか、昨日観た「ジュリア&ジュリー」の料理よりよっぽどおいしそうに気持ち込めて描けている。でもポニョがハムが好きという設定が解せない…。あの年にしてもう肉食系女子という比喩か!?(そんなわけはない)お母さんがドアを開け閉めする仕草、宗介がバケツを運ぶ仕草、車のガラスに当たる雨粒…。観どころは全画面だ。

始まって10分ぐらいで、なんだかおんぼろフィルムみたいな縦線が入るなあと思ってたら、そのうちピンぼけしだして、とうとう止まっちゃいました。ピンぼけ直すのに5分くれ、とあんちゃんがやって来て説明して、結局15分ぐらいボーッと待ってました。この後、昨日バッタリ会ったデボラの美容室に予約を入れてたので、間に合わないかとハラハラしました。ギリで間に合って良かった。

大人と子どもが笑うところ(おでこゴツン←子ども/お父さんがジト目で海からやって来る←大人とか)が違ってて面白かったけど、みんな画面に見入ってた感じ。終わったときは拍手がちょっと起きたし、ちゃんと残って歌を聴いてる子たちもいっぱいいました。なぜか一緒に歌えるお兄さんとかもいたりして。歌は英語版。「♪ponyo pony tiny little fish」

2009年8月1日土曜日

"G-FORCE"「スパイアニマル・Gフォース」

CG製のギニーピッグたちが大活躍するディズニー映画。ワトソンヴィルまで3D上映版を観にいきました。

FBIをスポンサーに、発明家のベンは密かに小動物をスパイに仕立てる訓練を施していました。FBIのお偉方に成果を見せるため、とあるハイテク富豪の豪邸へ忍びこませて、世界を破滅させる陰謀の情報を入手するのですが、情報を収めたPDAにウィルスが仕込まれており、結果は不首尾に。お偉方はチーム解散を命じます。

まー筋はどうでもいいんですが、CGというか、CGで作られたキャラクターと、実写部分の合成がものすごく上手くできていて、まったく違和感がなかったのが脅威的。ギニーピッグの毛並みも、とってもリアル。かわいかった〜。スティーヴ・ブシェミが声を当てているハムスターが途中で出てくるんですが、そいつが一番かわいかった。ウサギが出て来なくて残念。そのせいというわけでもないけど、途中で飽きちゃった。

もとネタは、絶対これでしょう。


これ、製作がブラッカイマーのせいもあり、かなり大々的に宣伝していました。公開前、街中や映画館に貼られたポスターに、ちびっこ達がうれしそーに寄っていくのを見て、「こりゃ当たるな」と思いました。ブラッカイマーの「お買いもの中毒な私」の中にも、ポスター貼ってあったから。商魂たくましーい。

ベン博士の役を、「The Hangover(ハングオーバー)」のザック・ガリフィアナキスが演じてます。
富豪役のビル・ナイ、あまり出て来ないんだけど、おもしろかった〜。ちょっと"The Bullet Man"で英語版鉄男を演じたエリックに感じが似てました。彼が年取ったらビル・ナイみたくなりそう。

"Moon"「月に囚われた男」

サム・ロックウェル主演の、月を舞台にした映画です。つい先日、アポロの月着陸場面の修復映像がニュースに流されておりました(オリジナルビデオを上書きして消しちゃうなんて!)し、若田飛行士とか、宇宙関係の話題が続いてますが、近所の本屋さんでも、宇宙関係の本の特集棚が作られてました。月面着陸から40年目なんですね。

本作も、思弁的なSF。派手なCGとか出てきません。主要登場人物もサム・ロックウェルただ一人。滑らかに動くアームの付いた船内コンピューター・ロボット,ガーティ(「恐竜ガーティ」!…とは関係ない)の声を、ケビン・スペイシーが演じています。

エネルギー問題を、月から送られるヘリウムで解決した近未来。サムはただ一人、月の裏側の基地で作業をしていますが、もうすぐ3年の年期があけ、愛しい妻子の元へ帰れる日を楽しみにしています。でも、なんだか最近体調がすぐれないし、おまけに幻覚のようなものまで見始めます。ある時、作業中に事故を起こして気を失うサム。目を冷ますと、基地の医務室で横になっており、ガーティが様子を見守っていました。「サム、何が起きたか覚えていますか?」と声をかけるガーティ…。

ここから先は、書けません!

すごく面白かったから、SF映画が好きな人は、是非観て欲しいです。
サム・ロックウェルが、大活躍しています。アストロノートと基地を支配する、優しい声のコンピューターという図式は、「2001年」を彷彿させますが、さて、このガーティは、HALのようにサムに危害を加えるのだろうか? 敵か味方か!?
道具立ては「2001年」ぽくても、どちらかというと本質は「ソラリス」です。音楽も、リメイク版「ソラリス」に似てました。

ガーティについた小さなモニタ画面に、ニコちゃんマークが映って、その時のガーティの気分で表情が困った顔になったりするのが、面白かったです。

"The Hurt Locker"「ハート・ロッカー」

なんだか偉く評価が高いのと、宇宙服みたいな、ものものしい格好の兵士とその背後の爆煙を映したスチル写真に惹かれ、あまり得意ではない戦争映画を観にいきました。男よりも男らしい映画を撮ると言われているキャスリン・ビグロー監督の、イラク戦争ものです。

冒頭早速例の宇宙服みたいなカッコで路上に仕掛けられた爆発物を処理しに向かうのは、あら、ガイ・ピアースじゃないですか。とはいえ彼は脇役で、 物語の大半は、Jeremy Rennerという知らない役者が演じる命知らずな爆発物処理係、ジェームズ軍曹を中心に薦められます。とにかくコイツは無茶な野郎で、後方支援の仲間の いうことは聞かないし、気が散るからと指示の飛んでくるヘッドホンは捨てちゃうし、身軽になりたくて宇宙服も脱いじゃうし、作戦おかまいなしに、爆弾を無力化するまでテコでも動かない。

『ボーフォート -レバノンからの撤退-』というイスラエル製の、アカデミー賞外国映画賞にノミネートされた映画にも、地雷処理係が任務にあたる非常に緊迫感のある場面があったけれど、この戦争映画が特異なのが、爆発物を処理している米軍兵士たちを、遠巻きにしてイラクの一般市民や当の爆弾を仕掛けた者たちが見物しているところ。彼らの冷ややかな目もゾッとしないし、武装しているわけではないから手を出せないところももどかしい。

ほかに、レイフ・ファインズ(ビグローの「ストレンジ・デイズ」に出てたな)や「デクスター」のシーズン1後半で印象的な役を演じてた人も出ています。

なんか、期待していった、ハイテク兵器ばりばりのSFチックな戦闘場面みたいのは全然出てきませんでした。(^_^;) 途中で、すごい年配の観 客が、「ナイス・ショット!」って叫んだり、なんか同年代の知らない観客同士で会話してたり、興奮した様子でした。ベトナム時代でも思いだしていたので しょうか…(^_^;)。

マジ評価高いんで、賞レースにからんでくると思うけど、一般の人の感想で、たまに低い評を与えているのを読むと、どうも、実際にイラク戦争に行っ た人の目から見ると、この映画で描かれてる兵士の言動や作戦の運び方などは、実際とかけ離れてるみたいで、期待して観にいったのにとてもガッカリした、と 書いてありました。脚本は、イラクの爆発物処理班に従軍したジャーナリストが書いてるんですけどね。まあ当事者が物事を客観的・大局的に見られるかと言えば、必ずしもそうではないのですが…。「シビリアンがシビリアンに向けて作った映画だ。シビリアンの評論家が絶賛するのも無理はない」と書いてありまし た。

"The Hangover"「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」

これは、もう1ヶ月ぐらい前から公開されていて、笑えると評判のコメディです。

むさいデブのおっさんが、寝ぼけ眼でホテルのトイレに入ったら虎がいた、というベタな予告編で、全然見る気がなかったんですが、歯医者でroot canal(神経をグシグシする治療)の治療中、助手の人が「"Hangover"観た? すごく面白いから観た方がいいわよ」と、お勧めしてくれたもんで、観にいってみました。(こちらの歯医者は治療中、「先生と助手はおしゃべりすべし」という不文律でもあるみたいです)彼女が気に入ったワケ、分かりました。歯科医が出 てくるんですよ。それで、「こいつドクターとか名乗ってるけど、ただの歯医者だから。心臓発作起こしたら、911電話しなきゃダメだよ」とかバカにされて ますから。えー、でも歯科医なんて、ちょろい治療をチョイチョイとやって、バカ高い治療費もらって、1年の半分は休暇取っていいご身分だと思うんですけど… (←個人的恨み)。しかも劇中の歯科医は、ラリった勢いで自分で自分の歯を抜いちゃうのです。昨日歯を抜いたところがまだ痛むので、生々しかったわ(^_^;)。

でも単純に面白かった! デブの、新郎の義兄(バチュラーパーティでラスベガスに行く話なのです)の役(ザック・ガリフィアナキス)が、激しくおもしろかったです。歯医者さんが式を挙げるピンク色の安っぽい教会、ベガスに行ったとき見たなぁ。

"Sleep Dealer"「マインド・シューター」

[鑑賞日: 6/20/09]
"Sleep Dealer"という、メキシコ製サイバーパンク映画を観ました。
サイバーパンクといえどとても土臭く、刺激的なテーマの、おもしろい映画でした。

アメリカ合衆国とメキシコの国境が封鎖された近未来。アメリカにあこがれる若者メモは田舎からティファナへ上京し、天井からニョキニョキ伸びたコードを体に差しこんで”ジャック・イン”し、バーチャルな方法でアメリカへ上陸します。といっても、アメリカで建設中のビルの工事現場で作業をしているロボットを、遠隔操作しているだけなのですが。「ウォーリー」を操作してるみたいでちょっと楽しそうだけど、でも装置が時々不具合を起こして、労働者の神経がやられたり、あまり長く続けると視覚を失ったりする、危険きわまりない仕事。

サイバーな世界へ誘う装置は、サンディエゴで兵士が使用するものは、ハリウッド映画で観られるようなクリーンで無菌でピカピカで洗練されたデザインですが、メキシコで使われるものは、塚本映画やクエイ兄弟やもっといえば「ブレード・ランナー」にも共通するような、ダストやサビや細菌だらけみたいな、不潔・不浄なガジェット。

メモの父親は、昔は広い農地を持ち、小作農もたくさん雇っていた地主でしたが、ある時アメリカ資本でダムが建設されたせいで畑に水が行かなくなり、作物が採れなくなってしまい、今では貧困にあえぎ、ダムから買う水の料金もママなりません。観たのがだいぶ前だからうろ覚えだけど、父はメモに不毛な土地を見せ、「未来がみたいか。これが俺たちの未来だ。未来はあのダムに盗まれたのだ」といいます。

メモの美しい彼女は、自分の記憶を売り、それを「小説」と称していますが(その買い手が、実は…)、やっていることは自分の臓器を切り売りしている人たちと大差ありません。

つまり、この映画が描いているのは、後進国から安い労働力だけを搾り取り、うま味は全部自分たちで独占している先進諸国、という現在の図式を極端にした世界。


久しぶりに「ニューロマンサー」を読み返してみたくなってしまう映画でした。

2008年のサンダンス映画祭で上映され、日本では「マインド・シューター」という題でDVD化されてるようです。

"Watchmen"

「ウォッチメン」て、あれだ、「泣いた赤鬼」だ。

やべえ、はまりそうだ。

"The First Three Lives of Stuart Hornsley"

[鑑賞日: 7/20/09]

みなさん皆既日食観ましたか?
私はYoutubeなどでちょっと観ました。

山村浩二の アカデミー賞短編アニメーションノミネート作「頭山」Mt. Headが収録されている短編映画集DVDを観ていたら、その中に収められた"The First Three Lives of Stuart Hornsley"というアメリカの実写短編がとても面白かったです。
バークレー大のハンサムな黒人の学生が、教室で一人熱心にタイムマシン(!)実用化の計算式をしていると、そこへミミという日系の学生仲間がやってきて、自分の作ったピンホール観測鏡で皆既日食を一緒に観ようと誘います。でも計算に夢中の彼は断ってしまう。数年後、それがすべてのケチのつきはじめだったと、タイムマ シンを完成させた彼はその時点に戻り、過去を変えようとします。マイルドなユーモアをまぶした、とてもクレバーな作品で、主演の、演技が出来る予想ガイみ たいなTunde Adebimpe(トゥン デ・アデビンペ)もよかったです。その後「レイチェルの結婚」に出ているらしい。お手製の時間旅行服が、「ぼくらの未来へ逆回転」のヤツみたいでほほえま しかったです。彼の相棒はイタリア系の小学生だし(彼は不本意ながら小学校の先生をしている)。おつむと、手先と、映画愛だけが頼りの、DIYの小品。
ハインラインの「夏への扉」がお好きなら、きっととても気に入る。

A total eclips sychronicity. A small, smart, hand-made DIY piece!
If you like Heinlein's "The Door Into Summer," you'll love it.

“The Velveteen Rabbit”(クレイアニメ版)

[鑑賞日: 7/24/09]

こちらはクレイアニメ版「ビ ロードうさぎ」。
2004年の広島アニメフェスでも上映されたらしいです。製作はXYZoo Animationというところなんですが、なんと南アフリカはケープタウンのスタジオです。
ウィル・ヴィントンテイストの、背景もキャラクターもすべ てクレイのとても素敵な作品でした。ウサギ、文句なくかわいい。

A clay animation made by a south Africa studio called “XYZoo Animation.” Like Will Vinton, All characters and sets are made by clay. A rabbit is so cute!

“The Velveteen Rabbit”「ビロードうさぎ」

[鑑賞日: 7/20/09]

こちらの子どもで読んだり読み聞かせられたりしたことがない子はいないと言われる、児童文学のクラシック 「ビロードうさぎ」の映画化最新作です。製作はカナダみたい。監督は「大草原の小さな家」の巻き毛のおとうさん、マイケル・ランドンの息子さんで、ジェー ン・シーモア、トム・スケリット、エレン・バーンステインなどが声の出演をしています。実写パートとアニメーションパートを併用した作品です。ウサギが動 いてしゃべるところは伝統的な手描きアニメで、背景部分をCGで描いています。
原作を大分アレンジしていて、最愛の妻と死に別れて以来心を閉ざし ている父親と、愛に飢えた息子、そして厳格で冷たい祖母が、家族愛を取り戻す、クリスマスのお話にアレンジしています。場所の設定はよくわからないけれど (カナダロケなのか寒そう)、時代は物語が書かれた頃(20年代?)で、お金持ちなお祖母さんの家の、アンティークなインテリアや小道具などの美術が行き 届いていて見飽きません。冷ややかなお祖母さんの造型も、ただの嫌なお祖母さんじゃなくて細やかな演出がされていて、十分共感できるキャラクターになって います。雑な神経の人の作る子ども向けの映画は最悪ですからね(^_^;)。
それでもって、子役の少年がりんごのほっぺのとてもかわいらしい子 で、小公子の役も務まりそうな、愛らしくも端正な顔だちです。アニメ部分ではその子も2Dになっちゃいます。かんじんのうさぎは、実物のぬいぐるみを手描 きアニメにした時に表情をつけやすいデザインにしてあるので、アンティークな素朴さはちょっと少ないですが、それでもなかなかカワイイです。
削除シーンがついていて、そこには、本編とは違う手法のシーンや、削除するにはかなり重要なシーンがあったりして、それも面白いです。アニメーションパートは、効果音がないので、アニメーションにとってどれだけ効果音が重要か、よくわかります。
A Well made family classic. The stuffed animal rabbit was designed to go with 2D animation, so it lost the naivety a little bit, but still has a charm.

2009年7月31日金曜日

"Bruno"「ブルーノ」


[鑑賞日: 7/10/09]

"Bruno"を観ました。「ボラット」のサッシャ・バロン・コーエンの新作です。「ボラット」と同じ手法で、今度はオーストリア人でゲイのファンション評論家、ブルーノに扮したバロン・コーエンが、アメリカ人をおちょくりまくるモックメンタリー。

  一応おおまかな話の流れがあって、オーストリアで自分の番組を持っていた人気者のブルーノが、ファッション・ウィークでヘマをやったため(全身ベロクロの 衣装を着て取材に行ったらカーテンや衣装がベタベタくっついちゃって、そのカッコでランウェイに出てしまった)干されてしまい、そんならとハリウッドに渡 りセレブになろうと悪戦苦闘します。最初は、セレブたちにインタビューする自分がホストの番組を作ろうと、ポーラ・アブドゥルとのインタビューをセッティ ングしますが、メキシコ人の庭師たちに人間椅子や「おっさん盛り」をやらせて、ポーラに逃げられた末にブラックリストに載せられてしまいます。このくだりでラトーヤのインタビューもあったらしいけど、マイケル急死でカットされ、3分短くなったそうです。ロン・なんとかっていう、元大統領選候補の一人だった 政治家にモーションをかけたら、彼は部屋を逃げ出して、"Queerめ!"って罵るんだけど、その言葉は言ってはいけない言葉みたいで、 どの評でも、「彼には同情するけど、それを言っちゃあおしまいよ」みたいに書いてました。

 ハリソン・フォードに「Fuck You!」されながらなんとかプロモをでっちあげ、CBSのスタジオでフォーカス・グループに見せますが、どアップでぶるんぶるん回転するブルーノの局部 (←これ日本公開の時どうすんのかなー)とかを見せられた人たちはもちろんいい反応をするはずがなく、「ガンより悪い」とか書かれます。それで中東へ行っ て、反目しあう要人たちと平和会談したりとか、テロリストに自分を誘拐してくれと頼んだりとか、怖れ知らずなことをやった後またアメリカに舞い戻り、さら に言語道断なことを重ねていきます。

本作の笑いは、2通りに分類できると思う。あんまりうまく書けないけど、バロン・コーエンの創作 した極端にカリカチュアライズされた異邦人キャラクターに、おどろいたりあきれたり、なんとか冷静に対処しようとしたり(←これが一番はたから見るとおも しろいわけだが)する良識あふれるアメリカ人の、思わず素が露呈してしまう反応が呼ぶ、わりと気楽な笑い(人様の失態だからね)と、表向き異邦人キャラクターではあるけれど、実はそのキャラクターを通して極端にカリカチュアライズしているのはアメリカ人の姿で、彼の口あんぐりの行動は、実際のアメリカ人のしている行動や、アメリカ社会を大げさにこっけいに 再現しているだけ(他国の文化を尊重せずに自分たちの優れた「平和」を押しつけようとしたりとか)で、それを笑う、「鏡に映る自分を笑う」という笑いの2 つ。後者を心から笑い飛ばせる人は、「よくぞやってくれた」とこの映画を評価するし、そうでない人は心からは楽しめないと思う。私も心からは笑えなかっ た。理由はもっと根本的なことだけど。

おもしろいのは、カザフタン人を滑稽な人物造型にした「ボラット」は褒めちぎった評論家の一部が、「ブルーノ」はゲイを滑稽なステレオタイプに描いていて全く笑 えない、と否定していること。そういう表面的な倫理観とかを笑っているんじゃないの、バロン・コーエンは。でも、「ファッション評論家のブルーノが、 ファッション界から早々に追放されて風刺する対象を失い、あとはゲイの部分で笑いを取るしかなくなって存在理由がなくなった」みたいな評は、言えてると思 う。ファッション界をむちゃくちゃおちょくるブルーノだったらもっと気楽に笑えたろうな。それはバロン・コーエンの意図する笑いではないんだろうけど。

最 後の方の、レスリングを見に来た血に飢えた観客たちの前で、とっくみあいがいつの間にかゲイの恋人たちの抱擁になっちゃって、彼らの怒髪天をつくところと、ブルーノと「花嫁」の結婚を拒否した司祭に、ブルーノが「私たちは夫婦よ、子どももいるのよ」と主張すると、「いつ産んだんですか?」と質問 してから、司祭が「なんでこんなこと聞いたのかわからない」と、がっくり肩を落とすところが、すんごく好き。

野ウサギが一匹、かわいそうな目にあいます。
あとビックリ大物ゲストとかも。人間椅子に座って華麗に歌うEJが素敵♡

"The Proposal"「あなたは私の婿になる」

[鑑賞日: 7/6/09]

"The Proposal"を観ました。
サンドラ・ブロック扮するカナダ国籍の鬼編集長が、ビザ切れで国外退去させられる前に、部下の秘書と偽装結婚しようという、「グリーンカード」ネタのラブ コメディ。私、恋愛コメディってトンと食指が動かないんですが、評判がわりといいし、サンドラ・ブロックのお相手役が、スカーレット・ヨハンソンの彼氏だ というので、どんなヤツなんだろうと下世話な好奇心で観にいきました(^_^;)。
典型的な素材を過不足なく集め、新鮮味はなくても上手に料理してあるので、楽しく観れました。実は富豪の息子だった秘書、お人好しな未来の義理の母、エキ セントリックな祖母、父と息子の確執、お姑さんの飼ってる愛玩犬がとんだ災難に遭う(←これは"Easy Virtue"でも使っていた古典的な手だ)etc... 秘書の実家はアラスカ州にあるんですが、ちょうどサラ・ペイリンが知事を辞めると言いだした頃 で、タイムリーな場所選択でした。「リッチな白人のアラスカ」って、あんな感じなのか…。なるほど。
秘書の家族に、プロポーズの様子を教えてとせがまれると、秘書は「彼女に話してもらおう。話すのが得意だから」とサンドラ・ブロックに水を向けるところで、後ろの席のおじいさんが、なぜか爆笑してました。ツボって人それぞれだよなぁ。
地元の人気者、ヒスパニックの男性ストリッパーおじさんが、アクの強さで目立ってました。

"Public Enemies"『パブリック・エネミーズ』

[鑑賞日: 7/08/09]

"Public Enemies"を観ました。マイケル・マン監督、ジョニデ主演。

<ネタばれあり! まあ実話なんだけど>

有名な実在の銀行強盗、ジョン・デリンジャーのお話で、相当史実に忠実らしいです。どのくらい忠実かというと、有名な「赤いドレスの女」は、実は赤ではなくてオレンジのスカートをはいていたそうで、映画でもそういう描写になっていて、ロジャー・エバートが「そこまでしなくてもいいじゃん」とガッカリしていま した。
 さて、今回この映画はSony Cinealta F23HDというHDカメラを使用していて、業界はその点に大注目しています。HD撮影など今どきめずらしくないだろうに、なぜかよく分からないんです が、フィルムの質感がなくなり、非常にリアルで体感的な、今までにない映画体験を観客は味わうだろうと、なんか革命的な事態のように、複数の評が書いてま した。確かに、非常に画質がクリアで、特に、夜の銃撃戦シーンに、その威力が遺憾なく発揮されていました(その分、映画館のスクリーンのボロさがばれてい た)が…。それよりも、トーシロは、$150,000.00というカメラのお値段にビックリです。"American Cinematographer"誌によると、マン監督は最初はフィルムがいいと思ってたのですが、フィルムとデジタル同時にテスト撮りをしてみたら、特 に夜のシーンの鮮明さで、デジタルに軍配が上がったんですって。

そういう周辺事情はともかく、ジョニデがすごくカッコ良かったです! 基 本的にデリンジャーは、何か深い事情があるわけでもなく、ただそこに銀行があるから、みたいな感じで銀行を襲い金を奪う、非常にシンプルな犯罪者として描 かれており、でもヤマに当たるときは彼なりの規範で効率的に動き、不必要な暴力はふるわずはした金にも手をつけないため、大衆にはちょっとした人気があ る。ギ ロッってにらみを利かせると凄みがあって、スマートな強面って感じです。映画の最初の方、彼女(エディット・ピアフ役で賞もらったフランスのマリアンヌ・ コテヤール)と のなれそめのくだりは、なぜかコートが意味深な使われ方をしていて、寒がるビリー(彼女の名前)に自分のコートをかけてあげるのですが、その前のヤマで、 人質に取ったお嬢さんにやっぱりコートをかけてあげる一幕がありました。それから、デリンジャーを追うGメンのパーヴィス捜査官(クリスチャン・ベール) が、デリンジャーの手がかりをつかむのが、どこからか入手した彼のコート。そして、クロークをしている彼女の職場へやって来たデリンジャーが、「俺の女に なれ!」と迫り、「あなたのこと何も知らないもの」と鼻白まれると、「なんとかとかんとかと野球となんとかが好きで、お前が好きだ。他に知りたいこと は?」 とたたみかけます(「ありませんっあなたについてきます!」っ て、女性の観客全員と一部の男性は思ったに違いない)。その間に、服を預けていた男が「ちょっと、僕のコートは!?」ってうるさく口を挟むもんだから、 強面デリンジャーはそいつに一発お見舞いしちまいます。いい災難だ。ある評では、デリンジャーは映画ファンで、クラーク・ゲーブル気取りだったみたいで (実際、映画のクライマックスで、彼が映画館で観る映画がゲーブルの「男の世界」。男の世界って、マイケル・マン映画そのものじゃん)ジョニデは役作りを 半分デリンジャー、半分ゲーブルから借りてるって書いてありました。ジョニデ最高の演技とか、グレタ・ガルボ的な要素を持ってる役者だ、とか激賞されてる ので、いくつかの賞にノミネートされるかもしれません。 ただ、東宝のマスコミ向けメールによれば、洗練された立ち振る舞いで「FBIのクラーク・ゲーブル」と呼ばれてたのは、メルヴィン・パーヴィス捜査官の方 だそうですが。とまれ、全編強面(ニヤリと片頬を上げて笑うジョニデのアップがカッコいい!)のデリンジャーが、ビリーをFBIの鼻先でかっさらい、 久しぶりに再会したときに、すごくうれしそうに、片頬じゃなくて、両ほおで笑うんですが、それがすご〜くかわいくて胸キュンでした。デリンジャーがビリー を見初めた時、彼女が着ていたのが深紅のドレス。男を破滅させる魔性の女、「赤いドレスの女」とは、ビリーのことだったなりよ。

あ と映画がこだわってたのが、デリンジャーの仲間や、FBI側の誰かが撃たれて倒れる度に、息をひきとるまで、しつようにデリンジャー、パーヴィ ス、またはカメラがジーッて看取るんですよ。捕まったデリンジャーの顔を見に来たパーヴィスに、デリンジャーは「あんたは目の前で人が死んでいくのに慣れ てるか?」って聞くんですよね。そういうところひとつ取っても、既製のギャング映画とはかなり毛色が違います。

ジョニデのピカレスク 振りは見ものだし、とても面白く観られたし、アクション場面もすごく迫力あったし絵作りも申し分ないですが、映画が巧妙に作られていればいるほど、観てる 間中、「マイケル・マンは何がいいたくてこの映画を作ったんだろう?」ってずっと疑問でした。私がアクション映画ファンじゃないせいかなと思ったんです が、すごく褒めている評でも、「でも何かが足りない」と書いてるのが2本ほどあったので、あながち的外れな印象でもないの でしょう。

ジョ ニデも眼福だったけれど、パーヴィスの部下の一人に凄い腕のたつ、しぶい金髪の男がいて、そいつの存在感が、中盤から徐々にジワジワ増していきます。デリ ンジャーがどの映画館に行くかを当てたのもそいつで、そしてデリンジャーを仕留めたのが、パーヴィス(彼自身も冷酷なハンター)ではなくそいつで、映画の ラストシークエンス、そいつがビリーに面会に行くのですが、そのシーンと、ビリーの涙で、なんだかそれまでのモヤモヤが、スーッとカタルシスとなって消え て行きました。女の涙は凄いねっ。目千両じゃなくて涙千両だ。最後にテロップで、読み違いでなければ、その1年後ぐらいに、FBIを辞めたパーヴィスは自 殺したって書いてありました。自分 で獲物を仕留められなかったことが尾を引いたのかなあ。クリスチャン・ベールも超売れっ子ですね。

後で映画雑誌をナナメ読みしたら、マイケル・マンが、「僕が興味があったのは、デリンジャーの心理、何が彼の行動を駆りたてたのかだ」って言ってました。

関係ないけど、ジョニデとデリンジャーってイニシャルが同じだ。JD。

"UP"「カールじいさんの空飛ぶ家」


[鑑賞日: 6/7/09]

渡米後いのいちで、ピクサーの"UP"(「カールじいさんの空飛ぶ家」)を観ました。

ピクサーの映画って、「Toy Story」の頃から、あまり予告編に惹かれないんですよね。それは、電気スタンドとか、魚とか、蟻とか、モンスターとか、およそアニメーションの主人公には似つかわしくなさそうなモチーフを持ってくるせいかも知れません。この"UP"も、じじいが主人公ですよ、じじぃが。でも、意外なモチーフを、とんでもなく素敵な作品に仕上げてしまうのが、ピクサーマジック。本作も、年若い者でも、主人公のカールじいさんにすんなり感情移入できるようなキャラクター設計を施し、それがちょっと無理なちびっ子には、子どもの脇役と、ワンコや鳥さんなどのキュートな動物が用意され、申し分のないファミリー映画に仕上がってます。

あとはもう、楽しむだけ。

蛇足。
今回のCGは、刺繍などの質感がいい感じでした。(「レミー」の時はライティングがとりわけ素晴らしかったす)
あの滝、ウィリス・オブライエンの「ロストワールド」の滝だよね…。

でもピクサーて、宮崎アニメがもう土台になっちゃってるんだなあ感、ありあり。バイタリティあふれるシルバー世代(←政治的に正しい表現)とかね。

短編の、雲とコウノトリのお話(確か"Partry Clouday"という題名)も愛らしい。ちょうど、予告編で空からミートボールが降ってくるCGアニメ("Cloudy with chance of the Meatball"とかいう題)をやっていて、客席でえらくウケてましたけど、ちょっとなぁ。食べ物で遊んじゃいけません。


映画の最後に、アイスクリーム屋さんが出てくるのだけど、そのパーラー「Fenton's」はカリフォルニア州オークランドに実在する老舗で、監督のお気に入りなので登場させたんですって。先日バークレーに独立記念日の花火を観にいったついでに、ピクサーとそのお店に寄って、アイスクリームを食べてきました。おいしかった〜。お店は「UP」効果で大人気。場面写真と、実際のお店、ちょっと違うけど、昔はこんな姿だったのかしら。映画公開されたら、見直してみてください。

http://www.fentonscreamery.com/

"Taken"「96時間」

"Taken"「96時間」を観ました。以前はなかったのですが、Safewayというスーパーのチェーン店が一泊1ドルのDVDレンタル機を置くようになり、借りてみました。タイトル数はもちろん少ないけれど、話題作を気軽に見るには便利です。欠点は、ディスクが汚すぎて、クリーニングしないと再生かからな いこと。ブロックバスターなどレンタルビデオ店が軒並みつぶれているので助かります(というか一因なんだろうけど)

"Taken" は、きわめてシンプルな筋立てで、ストレートなアクションにした狙いが当たり、ヒットもしたし評判もいいです。評の中に、「真の 映画ファンなら楽しめる。この映画を『くだらない』という者もいるかもしれない。子どもの頃TVの『バットマン』を夢中で観ていても、少し成長するとく だらなく思え、また少し成長すると、そのワザとらしさは狙ってのものだと理解できるようになり、また楽しんで観るようになる。それと同じ事なのだ」という 論調のものがありました。

そうか? そうなのか?

私は、「自分の子どものためなら何をしてもいい。法を破っても車を盗んでも人を脅迫してもだましても撃っても拷問の末殺してもいい。だってみんなそうしてるから。自分の子どもでなければ、売り飛ばしても何しても平気なんだから」という世界観に、暗くなります。現実を見回せばそうかもしれない。だけどそれを是とし た上で娯楽アクション作品を作り、主人公がムチャなことをすればするほど喝采を送る観客という構図に、うすら寒い思いがする。まるでリアムが演じるジャッ ク・バウアーの活躍をスクリーンで観ているようだった。つーかさ、リアムが警備についた人気歌手のコンサートに賊がど派手に乱入し、おもむろにナイフを取 り出して歌手を狙うという展開に、しらけるな、しらけるヤツは厨房(この使い方あってるのかな?)だ、というのかい。

一緒に借りた「ラーメンガール」を楽しく観てしまった私は、やはり真の映画ファンではないのか。

ところでリアムといえば、これ、これ。
http://www.apple.com/trailers/disney/ponyo/hd/

ウィリアム・シャトナーが実はバルカンのあいさつの指が作れないとか、いろいろおもしろいことありますが、最近のヒットが、これ。 リアム・ニーソンに「ぽにょ」って言わすか~! 何回観ても笑えます。 サンタにも8月14日に来るみたいなんで、楽しみ。

"Easy Virtue", "Then She Found Me"


[鑑賞日: 6/06/09]

<ネタばれ!> 
"Easy Virtue"を観ました。マチネーの、3時の回を観たのですが、まぁ入ってる方です。ただし、見事に白髪の方々ばかり。エンジョイされてたようで、笑い声が起きていました。

ノエル・カワードの戯曲を、『プリシラ』のステファン・エリオット監督が10年ぶりぐらいに映画化しました。そんなにずっと映画化したい題材がなかった のか、それほど映画化したい題材だったと思うべきか…。まぁ、私の目当てはコリン・ファースなんで、どうでもいいんですが(^_^;)。むかし、ヒッチコックも「ふしだらな女」とう邦題で映画化したようです。

コリンの役どころは、主役夫婦(ジェシカ・ビールとカスピアン王子のベン・バーンズ) の父親なんですが、うーん、ハッキリ言って、キャスト中いちばん素敵♡。無精ヒゲで、冴えない人生の隠遁者なのに、不思議だ。最初はもっさりした印象で、 「ああ、すっかり中年」とガッカリしたけど、どんどんいぶし銀のように光りだしてくるのです。出番も多いし、近年の作品ではいちばんの出色作かも、と楽し くみていてたら、クライマックスでは、なんとジェシカ・ビールとタンゴ! 鼻血ブーっすよ。そして、あの最後。でも、あの組み合わせは長続きしないと思う けど…。
 
ジェシカ・ビール分する女ドライバーのニュースリールを上映するジャズエイジの劇場、という凝った仕掛けのオープニングではじまり、劇中カワードの曲をカスピアン王子が歌い出し(歌担当は彼だけ)、コール・ポーターなどの曲もBGMに取りいれています。さすが「プリシラ」の監督、ミュージカル仕立てはお手の物。フリースピリットあふれる存在が旧弊な共同体に入りこみ、ある者は反発し、ある者は本当の自分に気づく、という展開は、「プリシラ」と共通するものがあるかも。

 チェ ンジ・オブ・フォーカスや、映り込みを多用したトリッキーな演出が、こういう時代設定の作品には似つかわしくないようにも思うけど、それこそ旧弊な考えかも知れません。

カスピアン王子のお家はアッパーミドル階級なのですが、屋敷内のところどころに、やたらエロい像が配されており、美しいけれど体面第一のクリスティン・スコット・トーマス扮する女主人を裏切っています。ビールが、最後に像の一つを壊していくのが痛快。この時代の衣装に身を包んだビールが、たいへん美しいです。
 
そういえばずっと前にも、渡米直後にコリンのコスチュームプレイ映画がかかって、いそいそ観に行った記憶があるなぁ。「アーネスト式なんとか」って映画だったかなあ。派手なヒット作はあまりないけど、コンスタントに地道に活躍しております、ダーシー様。新作はヴェネチア映画祭にコンペ出品されるみたいだし。塚本監督の「Bullet Man」と競うのね。

映画のエンドクレジットに、ビリー・オーシャンの”When The Going Gets Tough The Tough Get Going"が流れますが、コリンもちゃっかり歌ってます。「アーネスト」ではわざと下手に歌ってたのねん。

http://easyvirtuethemovie.co.uk/

先日たまたまコリンの「いとしい人」"Then She Found Me"がTVでやっていたので、観ましたが、ヘレン・ハントの変ぼうにびっくり。骨と皮ばかりの老婆のようになっちゃって、どうしたの? 彼女の母親役、ベッド・ミドラーの方が、小柄ながらあの年齢ですばらしい美脚で、よっぽどみずみずしいのですが…。コリンは、「ぼくのプレミア・ライフ」みたいな、かんしゃく演技が素敵でした。最近、「愛を読む人」とか、「〜する人」っていう邦題が流行り? 「いとしい人」って最低ランクの邦題だと思うけど。

2009年7月30日木曜日

"The Land of The Lost"

[鑑賞日:6/11/09]

"The Land of The Lost"という、ウィル・フェレルのコメディ映画を見ました。
「俺たちニュースキャスター」とか、低次元バディ・ムービーがツボのウィル・ファレルの映画は好きだけど、これは退屈でした。

ウィル・フェレル扮する「量子古生物学者」のマーシャル博士が、時空を超えて、パラレルワールドへタイムワープできる機械を発明して、恐竜や類人猿やトカゲ人がいる原始時代の生物相の世界にワープしてしまうという物語。

2月にサンタに遊びに来たときにポスターを観て、「お、ハリーハウゼン映画のオマージュか!?」と期待していたのだけど、古典怪獣映画への愛情みたいのは感じられませんでした。昔の、安っぽい特撮で有名なTVシリーズが元になっているそうで、納得。その手のクリーチャーは着ぐるみだろうし、合成の安っぽさなどを強調した演出はそのせいだったのね。

日本では、『マーシャル博士の恐竜ランド』という題で、9月公開が早々に決まったもよう。こんなのがすぐ公開されるのに、「コラライン」がいまだに未定なんて、なっとくできなーい。

だって、"Today"ショウのマット・ラウアーネタなんて、日本人が見たっておもしろくもなんともないし、元になった番組だって知らないでしょうに。

"Little Ashes"

[鑑賞日:6/9/09]

"Little Ashes"という映画を見ました。若き日のダリと、詩人ロルカ、映画監督ブニュエルとの出会いを描いた映画です。

ダリなんて、目玉をひんむいたカールひげのおじさんというイメージぐらいしかありませんでしたが、若いときはロルカやブニュエルと僚友で、しかも ロルカとは怪しい関係になったりします。二人の親密な様子に、ホモフォビア(実はその気あり)のブニュエルが嫉妬して、そのたんびに無関係な男をなぐるけ るするのがおかしかったです(笑い事じゃないけど)。

エキセントリックな外見と行動の、色白の若者というキャラクターだと、どうしてもジョニー・デップを連想しちゃいますが、ダリを演じている俳優さ んは、時にはカイル・マクラクラン、ときにはブレンダン・フレイザーに面差しが似ています。お耽美な雰囲気を醸すには、ちと割れアゴでガタイが良すぎ (^_^;)。でも後で調べたら、「トワイライト」で人気沸騰のイケメン俳優Robert Pattinsonさんだそうで。今度観てみよう。

ロルカとダリが旅行に行って、夜の海で月に照らされながらたゆたう場面が、なかなか官能的できれいでした。(というか、その場面のクリップを観て、観る気になったのですが)

パリに行ったダリとブニュエルが作った「アンダルシアの犬」というタイトルの有名なシュールレアル映画を見て、ファシズムうずまく祖国にひとり残ったアンダルシア人のロルカは傷つきます。

狙ってなのか予算不足なのか、風景の書き割りや演出などが、まま舞台っぽいのと、濃すぎるスペインなまりの英語がちょっと鼻につきます。

ロルカについてはほとんど何も知らなかったので、帰ってウィキなどで調べました。劇中のロルカとダリの関係は、「モーリス」の二人の主人公に似て ました。ぶっちゃけ、この映画からなんらかのインスピレーションを受けるか、まったくくだらないという印象を受けるかは、見る人の感性次第で、映画自体は いいとも悪いともいえないと思う。(なんじゃそりゃ(^_^;))乙女的感性を持ち合わせているロジャー・エバートの評を読んだら、3人のうち、一番才能 があるのが映画監督のブニュエル、と書いてるのが、映画関係者らしい評価でおもしろかったです。後ろの席に座った中年ゲイカップルにも感想を聞いてみた かったなあ。

http://www.littleashes-themovie.com/