2009年9月28日月曜日

"9" 「9 <ナイン> 〜9番目の奇妙な人形〜」


ティム・バートンがプロデュースを務めた作品です。
2,3年前、アカデミー賞短編アニメ賞にノミネートされた10分程度のCGアニメが原作で、作者はシェーン・アッカー。これを観たバートンがいたく気に入って、長編作品に仕上げたのですね。私も当時、上映会などで二度ぐらい、元の短編を観ましたが、あまりピンと来ませんでした。眼がないですね。

かなーり期待して観にいきました。ベネチア映画祭に行っていた間の、9月9日の公開だった(当然!)ので、早く帰って、観たくて仕方ありませんでした。

お話しは、人類どころか、生き物がすべて死滅してしまった世界。ある科学者が発明したマシンが原因です。科学者は、自分の取り返しのつかない失敗を償おうと、最後の力を振りしぼり、9に命を吹きこみます。自分の命を…。9とは、小さな麻袋の人形で、お腹の所にジッパーが付いており、開けるとなんだかゼンマイ仕掛けの、錆びついた感じのガジェットが入っています。9は最初、気がついた時は、自分が誰で、どんな目的があるのかなど、いまいち分かっていない様子。でも、自分と同じ姿の仲間と出会い、その直後、紅い眼が光る、ガイコツの恐竜みたいな機械の怪物に襲われ、せっかく出来た、いい感じの友達(「2」)を失ってしまいます。「2」は自分たちの使命も、「9」が持っていた緑色に光るコンパスみたいなタリスマンの用途も、知っているようだったのに…。やがて、9は他の仲間、1〜8達と会い、徐々に自分の役割を知ることになります。

映画の冒頭は、麻袋を縫って、人型を造る手のアップで、まるで「コラライン」みたいです。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」で、すたれかけていたストップモーション・アニメーションという手法を甦らせたティム・バートンが、とうとうCGに行ってしまったかと、ちょっと哀しいものを感じました。まあ、CGはどんどん進化して、ストップアニメーションっぽいビジュアルやテクスチャを、かなり再現できるようになったし、ストップモーション側でもデジタルを積極的に取りいれ、「コラライン」などは人形の顔の上下に入った線を消したりと、パッと観、逆にCGっぽいなめらかなテクスチャを施したりして、なんかどっちでもいいや状態になりかけてますからね、一部では。一方もうすぐ、なぜかウェス・アンダーソンが作ったベタベタな感じの長編ストップモーション・アニメが公開されるので、どんなものか、興味津々です。

さて、「9」ですが、基本的なストーリーと設定は、短編をほぼ膨らませた形になっていました。短編を観たときに疑問に思った、「この麻袋のみじめな人形たちは何?」「どうして動いているの?」「どうしてガイコツの恐竜みたいのに襲われて、魂を吸い取られてるの?」「恐竜を倒して、仲間の魂を解放して、その後、9はどうするんだろう、この生き物のひとっこひとりいない世界で」といった疑問に対し、とってつけたようなバックストーリーが与えられていますが、やっぱりなんだか、見終わってもモヤモヤしています。短編との最大の違いは、「9」たちがしゃべることかな。良しにつけ、悪しきにつけ。でも、声優の配役はとてもよかったです。イライジャ・ウッド、ジェニファー・コネリー、ジョン・C・ライリー、クリストファー・プラマー、クリスピン・グローヴァー、マーティン・ランドー…。

ビジュアル的な世界観は、素晴らしく、それだけでも観る価値十分です。スチームパンクならぬ、縫い目の目立つ、9達にちなみ、「スティッチパンク」だそうですよ。言い得て妙です。場面、場面もとても興味深いです。特に、一旦訪れた休息場面に蓄音機から流れる、「オーバー・ザ・レインボウ」の曲、それに合わせ、水平線の向こうからゆっくりやってくる、○○の場面。いいなぁ。

話の展開や、予告編のノリなんか、「サイボーグ009」ぽかったですが、どっちかというと松本大洋の「ナンバー5」に近いメンバー構成でした。双子がいたり。あ、それだけか。

その後、改めてオリジナルの短編を見直しました。やっぱり、よくわかんない世界でしたが、動き(アニメート)が非常に素晴らしいし、テクスチャも、ばっちり書き込んだ長編に比べればあっさりしていて、イラストっぽいところが、却っていい感じです。なるほどね。やっぱり私は眼がない。短編としてあっさり完結しているので、なんだか命をもたない無機物達が、大切な命を奪いあう、みたいな骨子をなんとなく想像できなくもないところが、長編より、優れていたかも。

<12/18>
PS3の「リトルビックプラネット」にはまっています。リビッツ(Sackperson)、ナインたちそっくし…。

"Surrogates"「サロゲート」

「サロゲート」という映画を観ました。SFで、グラフィック・ノベルが原作だそうです。主演は、ブルース・ウィリス。監督は、「ターミネーター3」「ハンコック」のジョナサン・モストウ。

近未来、ロボットと神経を接続して、遠隔操作で自由に操る技術が開発されたため、人々は喜んで日々の生活を自分の「代役」、もしくはアバターであるロボットに肩代わりさせ、自分は日がな一日、歯医者さんの診察台みたいな椅子に座って自宅にこもっているようになりました。すでに人類の99%がそういう生き方を選び、街行く人々はロボットばかり。生身で暮らす道を選んだ人々は、サロゲート・ロボットたちを「人形」と呼んで忌み嫌い、「予言者」と名乗るリーダーのもと、隔離地域で細々と共同生活をしています。ある日、ロボットの殺人事件が起き、操作していたオペレーターごと死んでしまいます。これは起きてはならない事態で、警察はパニックを防ぐために極秘で調査を進めます。任務に当たるのは、サロゲート版ブルース・ウィリスと相棒のラダ・ミッチェル。

サロゲートのウィリスは、金髪のかつらで、お肌もスベスベ(毛穴もシミもシワもなく、すごい厚塗り&特殊メイクなのか、もしくは「ウルトラバイオレット」みたいにデジタル修正しているのかな?)、スラリとして服装もパリッとしています。最も、町中のどこを見渡しも、そんな人々ばかりです。ここでひとつ疑問。どんな外見のロボットを選んでもいいので、たとえばふるいつきたくなるような美女が、実は中年の冴えないおっさんだった、ということも、映画の中ではあるのですが、ウィルスのように、自分のフォトショップ加工版みたいな姿を選ぶ人も多いみたいです。そういう人はナルシストなんだろうか? やはりアイディンティティの問題だろうか? でもさ、案外、結構同じ顔がたくさん歩き回る結果になるんじゃないの? 女はスーパーモデルとか、人気の女優さんとかにそっくりなロボットを選び、男はスポーツ選手のロボットを選ぶとかさ。アンジェリーナ・ジョリーそっくりのレジ打ちのおばさんとか、マイケル・ジョーダンそっくりのタクシーの運ちゃんとかが、街に溢れたりしないのかなぁ。そもそも、すごい運動能力が手に入るんだから、みんな大人しく会社員とか地味にやってないで、ロッククライミングしたりサーフィンしたり宇宙に行ったりしないのかな? いや、ロボット代を払うために働かなきゃいけないのか…。本体がトイレに行きたくなった時はどうするのかな? 椅子に座ったまま用を足すようになっているのかな、それとも突然ロボットが止まって、その間トイレに行くんだろうか。そうか、ロボットをトイレに行かせて、その間自分もトイレに行くのかな。ロボットの視覚を通して物事を見れるようになっているようだけど、事故で胴体が千切れたりしても痛みは感じないようになっているらしい。でも男女でいちゃついたりはしているから、触覚や性感は感じられるらしい。でなければ、サロゲートを選ぶ意味がないものね。まあ飲み食いはだけは生身でするんだろうけど。というと、外食は100%なくなるのね。デートはどうするんだ……なんて細かい疑問に観客が悩まされないように、システムの説明は、最初の2,3分で、大急ぎで流しちゃってるところがカワイイです。

サロゲートシステムの生みの親の科学者を、ジェームズ・クロムウェルが演じており、テクノロジー化の進んだ世界の描写も、青と白と黒が基調で、「アイ、ロボット」っぽいです。あと、ウィリスの奥さんとかが、「ステップフォード・ワイフ」を想起させました。でもいくつかレビューを読んでみると、「ブレードランナー」や「マトリックス」を引き合いに出している人が多かったです。

かなり大ざっぱな設定だけど、自分だったらどうするか(サロゲートシステムを受け入れるか拒否するか)とか、セルフイメージの問題とか、ネット中毒問題とか、考えると面白いです。この映画のスタッフたちの思い描く、若く美しい人々の世界は、白人か黒人しかいないみたいだったのが、なんか本音でてるなぁ、みたいな感じでした。

バーチャル・リアリティの世界が現実化した、みたいなテーマの、同じような映画「Gamer」も観たかったのですが、サンタクルーズでやっていなくて、まだ観れていません。レビューが非常に悪くて、それに比べると「サロゲート」はまあ評価されている方かな。