2012年2月27日月曜日

"The Artist""The Descendants""Albert Nobbs""My Week With Marilyn""The Oscar Nominated Short Films 2012 ANIMATED""A Dangerous Method""Tinker Tailor Soldier Spy"

アカデミー賞の発表まであと数時間!
というわけで、観だめていた映画の感想を一挙アップ!



★ "The Artist"『アーティスト

白黒の無声映画です。スコセッシの
ヒューゴの不思議な発明とは違うアプローチで、黎明期の映画/映画製作者たちへの愛を表現しています。スコセッシと比べれば若手監督ということもあり、底の浅さはいなめないけれど、映画のストーリー運び自体も無声映画の他愛なさを踏襲しているので、うまく調和しています。

何より、犬のアギーが観客のハートをわしづかみ! 主役の二人もすごく芸達者で、白黒映像で際立つ濃ゆい顔がアピーリングでしたが(男優の方が、「顔が濃すぎて映画俳優向きじゃないって言われ続けてたんだ」ってどこかで言っていました)、見終わった後、観客の頭の中は、アギーのかわいさでいっぱいになってるはずです。劇中や、劇中劇のアギーの活躍する姿、こちらの方がよっぽど「タンタンとスノーウィー」っぽいと思いました。(アギーは、犬のアカデミー賞をもらったけれど、もう引退するんですって。お疲れ様!)


そして、ラストシーンの締め方が良かったです。


"The Descendants"『ファミリー・ツリー』

アレクサンダー・ペイン監督の映画は、どれもいまいちピンと来ないんですよねぇ。今作も非常に評判が良く、アカデミー賞にもノミネートされていますが、どうしてこんなに評価が高いのか、さっぱりです。抑制されたユーモアとペーソスの、こういうタイプの映画を撮る監督が、アメリカでは珍しいからってだけじゃないのかな。すごくいらつく人間模様なのですが、いらつくのはそれだけリアルだからってこと?


娘から、奥さんが浮気していた事実を告げられ、家から飛び出したジョージ・クルーニーの、サンダルでみっともなく走る長回しカットが話題です。


"Albert Nobbs"『アルバート氏の人生

グレン・クローズが、
性別を隠してホテルの使用人として働く、19世紀のアイルランドが舞台の、ちょっと変わった物語。クローズは舞台でこの役を演じていたとか。

この映画の主人公の場合、別に性的嗜好で男装しているわけではなく、若い頃から必要に迫られて男の使用人として生きてきただけなので、本人は自覚していませんが、「愛」というものについて、混乱しているというか、区別ができていません。


「アリス」の美少女、
ミア・ワシコウスカ扮するメイドに「恋」をして、プロポーズするのですが、それは恋愛感情ではなく、擬似的な母性愛のようなものだったのでしょう。アルバートは母の愛を知らずに育ち、実の母については1枚の写真を持っているのみです。毎夜、その写真にキスをして眠るアルバート。

でも、「性」という要素を差し引けば、どんな愛も同じじゃないのか、とかそんな妄想をつらつらしてしまう映画でした。


 "The Pearce Sisters"という、アードマンアニメーションのアニメーターが作って、賞をたくさんもらった短編アニメーションがあります。荒涼とした浜辺に住む、醜い姉妹の話なのですが、なんだかその作品を連想してしまいました。ストーリー的には何の関係もないんですけどね。


一度だけ、「女装」をして浜辺を駆けるアルバートの姿がとても印象的。
エンドクレジットに流れる歌は、シニード・オコナーでした。


 "The Pearce Sisters"


"My Week With  Marilyn"『マリリン 7日間の恋』

ミシェル・ウィリアムズのマリリンが、とっても良かったです。この映画のマリリンは、精神的な不安定さ、あやうげな様子が、周囲の人間の保護意欲を刺激し、「自分が彼女を守ってあげなくては」という気持ちにさせることで味方につけ、大きな武器になることを、よく分かっていた、したたかな女優でした。昔、『マンイーター』という曲が流行ったけれど、こんな女性にかかったら、イギリスのお坊ちゃん(この映画の主人公)なんか、ひとたまりもないですねー。

「いくら装っても、しょせんはマリリンを演じるミシェル・ウィリアムズでしかない」と、ロジャー・エバートの子分の若手批評家たちが意地悪く言っていましたが、私はミシェル・ウィリアムズがオスカーの女優賞を獲ったらいいなと思います。

ケネス・ブラナーがローレンス・オリヴィエ役で共演、エマ・ワトソンと、ジュディ・デンチ(途中で忘れ去れてしまう扱いはどうなの)もちょい役出演。

"The Oscar Nominated Short Films 2012 ANIMATED"

アカデミー賞の短編賞にノミネートされた作品を、まとめて上演する
毎年恒例の上映会です。アニメ編と実写編に分かれています。

今年のノミネート作は、「なんでこれ?」とクビを捻るものが多いです。多分、
 "The Fantastic Flying Books of Mr. Morris Lessmore"か、ピクサーの"La Luna"が獲ると思いますが、前者は私の嫌いなタイプ。主人公の顔も苦手…。キートンがモデルらしいけれど。1つぶで3度楽しめる、 "A Morning Stroll"が一番好きでした。ニューヨークの街角を歩いていたら、向こうからニワトリが歩いてきて…。

いつもおまけで、惜しくもノミネートからもれた作品も、
"Highly Commended"として何作か一緒に上映するのですが、地球温暖化をおちょくった"Skylight"がおもしろかったです。



"A Dangerous Method"『危険なメソッド』

ユングとフロイトの実話を基にした、デヴィッド・クローネンバーグ監督作品です。去年アメリカで大ブレイクしたマイケル・ファスベンダー(『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』の若きマグニートー役、SHAME -シェイム-』
『裏切りのサーカス』)が、内心を表に出さない草食系のユング博士を演じ、ヴィゴ・モーテンセンが、食えなさそうなフロイト博士を演じています。

チューリッヒにあるユングのクリニックに、精神疾患を抱えたやんごとなきお嬢様が連れてこられるところから、物語が始まるのですが、この女性、サブリナ役のキーラ・ナイトレイの演技が、のっけから最後まで、凄かったです(鼻血ものカットあり!)。とはいえ見どころは、やっぱりユングとフロイトの、精神分析と治療法をめぐっての、丁々発止のやりとり(対話と書簡の両方)にあります。この二人が師弟関係だったとは、知りませんでした。


一見草食系のユングが、とんでもない大食漢として描かれているのは、どう分析すればいいのかしら?


クローネングバーグの映画というと、ダイレクトに視覚に訴える映画というイメージがありますが、本作は頭の方にもたくさん刺激をくれました。


★"Tinker Tailor Soldier Spy"『裏切りのサーカス』

ジョン・ル・カレのスパイ小説、スマイリー・シリーズの「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を、「ぼくのエリ 200歳の少女 」のトーマス・アルフレッドソン監督、ゲイリー・オールドマン主演で映画化。

これは、監督の選択の勝利ですねー。何でも言葉で説明するのではなく、映像で見せる演出がうまく機能して、ドライなスパイ物、という前提をくずさずに、なおかつポエティックでウェット、という要素が同居していました。


きっとセリフを聞き取るのに苦労するだろうと思ったので、耳の不自由な人向けに、字幕を表示する機械を備えた映画館に行ったのですが、この機能、まだ新しいものなので、ちゃんと動きませんでした。次に使えるタダ券をもらったけれどね。


この映画にも、マイケル・ファスベンダーが出演しています。コリン・ファース(←もちろんだから観た)との親友役。